内容説明
ミトラ教は紀元前3世紀頃のペルシャで信仰され、ヘレニズムの文化交流によって地中海世界に伝播した。民族宗教という出自であるにもかかわらず、一時はローマ帝国でキリスト教と覇を競うほど隆盛を誇ったが、秘儀的な宗教であったがゆえ詳細の多くは謎に包まれてきた。獅子頭人身の異貌、牡牛を屠る図像の異教神が、なぜ異文化の民に受け入れられていったのか? 起源、教義、儀礼、キリスト教への影響、凋落の理由等、この密儀宗教の全貌を膨大な資料で解き明かした第一人者による古典的研究。貴重図版多数収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ピンガペンギン
32
キリスト教がローマ帝国で公認されるまで、ヨーロッパで広く信仰されていたペルシャ由来の密儀宗教であるミトラ教(紀元前3世紀からある)に迫る。1899年初版と古いが古典的名著とのこと。数十点の彫刻などの写真が掲載されていて、ロンドンやアルプスの山深い土地など各地で信仰されていたとわかる。2世紀は様々なキリスト教会、グノーシス派などもあった。グノーシスは、その後公認された教義よりもミトラ教に似ているのでは。P172カトリックの典礼がミトラ教からヒントを得ているとの説。クリスマスはミトラ教で太陽の誕生日である。→2025/03/03
加納恭史
16
登山の疲れを温泉で癒そうと昨日は由仁町のユンニの湯に向かった。コーヒー色の湯が心地良い。ゆったりしてミトラ教のこの本を読む。著者フランツ・キュモン(1868~1947)はベルギーの宗教史家、考古学者。古代ペルシャ発祥の古代宗教のミトラ教はそこからゾロアスター教を生んだ。またインドやエジブトやギリシャやローマにも影響した。ローマではキリスト教が国教となる前はミトラ教が優勢であった。マニ教もその流れを汲む。多神教であった。ガリアにもローマ領や属州にも広がり、ローマ皇帝ディオクレティアヌスもミトラ教を信奉した。2025/06/15
Lotus
11
ミトラとはインド・イランの時代まで遡る古い神格である。 ミトラの来歴とミトラ教の勃発から終焉までまとめている。 オリエント由来ながら、ローマ皇帝にも庇護された宗教なのだそうだ。 勝利の神、敗れざる神としての性質からか軍人に指示され、ローマの外人部隊を通じて広い地域へ広まった。その広さたるやロンドンからも遺物が出土されるほど。 変遷 古代インド・イランで信仰。アーディティヤ神群の一柱。 セム系の占星術の影響を受ける。 ギリシャの影響を受け、ギリシャ的な姿を獲得する。 ローマで信仰されるもキリスト教に敗北。2022/11/28
evifrei
5
ペルシア由来の宗教であるミトラ教の、ローマ世界への伝播について。ミトラは地獄の勢力たる悪魔を常に監視し、それらと戦う不敗の太陽神である。ミトラは常に目覚めており欺くことの出来ない闘いの神とされており、その性質からペルシアという異郷の神であり犠牲獣を供物に厳格な入信儀式を要した密儀であるにも関わらず、伝播直後から奴隷や奴隷出身者・兵士を中心に地中海世界でも深く信仰された様だ。やがてこうした下層階級に留まらず、ローマ皇帝にも信仰をあらわす者が出現するに至るが、どのような宗教も兵士から始まるという点が興味深い。2019/09/22
DELEUZE
2
「古代ローマ史の多種多様な研究領域の中で、ミトラス教についてだけは、ただ一人の学者によってその業績が独占されていた(古代宗教学者ロジャー・ベックの回顧録)」。その「ただ一人の学者」とは、もちろん本書の著者F.キュモンのことだ。斯様なまでに当時のキュモンの世評と影響力は絶大であり、あたかも彼は「太古の眠りからミトラス神を目覚めさせた大司祭」「ミトラス教中興の祖」の如く持て囃されたという。今ではほぼ失われたかつての栄光(ミトラス神にとっても、キュモンにとっても)を偲ばせる、仄暗い輝きを放つ古典的名著である。2019/11/19
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