内容説明
科学(science)──それはもともと「知ること」を意味する。哲学や宗教を包含した知的営みであった中世以前の科学は、やがてルネサンスの訪れを機に次第にその姿を変えていく。啓蒙主義、フランス革命、産業革命、そして世界大戦といった政治的・文化的出来事の影響を受けた科学は、社会的位置をたえず変化させながら「制度化」の道をたどってきたのだ。複雑にからみあうさまざまな社会的要素を解きほぐし、約400年にわたる西洋科学の変遷を明快にまとめた定評ある入門書。図版多数。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヒロキです
19
科学の歴史をまとめた本。大学の授業の教科書として指定されたので読んでみた。世界史を選択して受験した僕にとって、この本に書いてあった歴史的事実はほとんど既知のものであったが科学という観点から現在までの歴史を見ることは、頭の整理となり新たな視点が養えたのではないかと思う。技術と科学の日常使っているがその違いについてはあやふやな部分もあったので、この本で違いに気づくことができたと思う。また最初は見せ物としての科学であってその後アマチュアの科学者からプロフェッショナルの科学者へと進化したことは少し意外であった。2019/04/27
Ex libris 毒餃子
14
「科学」が社会とどのように関わってきたかの本。"scientist"が"artist"を意識して作られた造語であることを初めて知った。近代科学が自然を「第二の聖書」として神の威光を確かめるためにスタートし英国、フランスが王立で科学研究機関を立ち上げる。その場合も英国は互助会的要素を含むが、フランスはブルボン朝の威光を示すためという違いを見せる。英国は産業革命を迎えるがまだまだtechnologyとscienceが合一しない状態であり、フランスは革命期のごたごたを経てナポレオンが科学行政機関の整備をする。2021/07/30
無重力蜜柑
10
STS的な話かなと思って積んでたけれど文字通りに「社会史的に整理した科学史」だった。時代とともに移り変わってきた科学者共同体の経済的、制度的基盤(教会→学界→国家→企業)とか、それと相関的な科学の目的(信仰→真理追求→国威発揚→実利)を国別に記述している。出て来る国は主にイギリス、フランス、ドイツ、アメリカ。比較制度史という感じで面白い。イギリスでは「君臨すれども統治せず」の原則が19世紀後半まで国家による科学への介入を妨げ、抜きん出た技術力と裏腹にアマチュア科学者が多く化学の体制下が進まなかった。2021/04/26
かんがく
9
理系分野にも手を出そうと思ったが、全くの門外漢なのでまずは専門の歴史から。ルネサンスからチェルノブイリまで、科学と教育、産業、哲学、政治、戦争などとの関わりをヨーロッパ中心に論述。あまり興味が持てない具体的な話が多く、やや退屈。2018/11/30
surucucu
5
12世紀ルネサンスに始まりベーコン、デカルト辺りまでは科学史として知っている話も多い。そこから先の教育制度や産業との関わりなどの社会史の部分が新鮮で面白かった。社会の中で科学が周知されていき、技術と交わり、国を支える産業としての存在感を増していき、2度の世界大戦でピークを迎える。今や科学研究が社会に与える影響を考えることは科学者に必須の倫理となっているが、そこまでの流れが途切れなく追えるようになっている。図版と注や索引も整えられていて教科書として使われるのも納得だと思った。2023/06/22