内容説明
母子家庭で育ったジョーは実家を出て念願の大学進学を果たす。授業で身近な年長者の伝記を書くことになり、祖父母も父親もいないため介護施設を訪れたところ、末期がん患者のカールを紹介される。カールは三十数年前に少女暴行殺人で有罪となった男で、病気のため仮釈放され、施設で最後の時を過ごしていた。カールは臨終の供述をしたいとジョーのインタビューに応じる。話を聴き、裁判記録を読むうちにジョーは事件に疑問を抱くようになり、真相を探り始めるが……。バリー賞など三冠、エドガー賞最優秀新人賞最終候補となった衝撃のデビュー作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
195
2020年このミス海外第13位。 三十年前の少女暴行殺人の真実を 探る物語である。事件の真相を探りながら、カール・アイヴィンの過去が 殺されたクリスタルの人生が 蘇る。ヴェトナム戦争での悲劇を盛り込みながら、償いの意味を問う …少し 哀しいミステリーだった。 2020/01/03
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
179
大学の授業で末期癌患者のカールの伝記を書くことになったジョー。カールはかつて少女をレイプした罪で有罪判決を受けていたが、深く関わるうちにジョーは事件に疑問を抱くように。 ミステリとしては王道?な感じで、展開的にはっと驚く、という感じはそこまでなかったけれど、まず主人公ジョーがとても魅力的。謎をひとつひとつ解明していく過程がとても心地よく、心に傷を負う登場人物たちが心を通わせて、必死で事件に挑む様は胸にぐっときます。秋になると海外作品が読みたくなるけど、とてもいい作品に出逢ったなぁ、と満足な1冊でした。2019/09/11
みっちゃん
176
秀逸レビューでこの作品へと誘ってくれた読友さん達に感謝。まず主人公のジョーがとても魅力的。躁鬱病でアルコール依存症の母、自閉症の弟との関係に悩みながら、自力で大学に通う真面目で心優しい青年。最初は只のレポートの単位目当てで始めた、死期間近の殺人犯へのインタビュー。が、その老人のベトナム戦争での過酷な体験、ジョー自身の辛い過去を織り混ぜながら、徐々に闇に葬られた事件の真実が明らかに。二転三転、絶体絶命のピンチに何度も「もうダメか」と天を仰ぎながら頁を捲る手が止まらない。ラストは涙、そして涙。続編も絶対読む。2021/05/30
Panzer Leader
161
アル中気味の母、自閉症の弟を抱える苦学生のジョーが大学の課題で身近な年長者の伝記を書くため殺人で有罪判決を受けた余命いくばくもないカールと知り合った。重い過去を背負った二人が会話を通じて心を開いてくる場面がジーンとくる。後半はジョーが殺人事件の謎を追う展開になるが若いだけに無鉄砲でハラハラさせられる。ジョーをはじめ登場人物たちがみんな魅力的で、ラストも綺麗に決まって満足感に浸りながら本を閉じることが出来た。シリーズものらしいので続きにも期待大。2019/10/22
stobe1904
150
【ミステリ新人賞を総なめにしたデビュー作】大学の英語科目の課題で年長者の自伝をまとめることになったジョーは、老人ホームを訪れ少女強姦殺害犯で、余命少ないため釈放されたカールと出会う。カールとの会合を重ねるにつれてカールの冤罪を確信したジョーは隣人のライラと過去の事件を調べることになるが…。素直な性格で奮闘するジョーへの共感を通して良い読後感を与えてくれた。2作目や別作品をぜひ読みたいと思うほどの出来栄えで、今年のミステリランキング級だと思う。★★★★★2019/06/09