内容説明
母子家庭で育ったジョーは実家を出て念願の大学進学を果たす。授業で身近な年長者の伝記を書くことになり、祖父母も父親もいないため介護施設を訪れたところ、末期がん患者のカールを紹介される。カールは三十数年前に少女暴行殺人で有罪となった男で、病気のため仮釈放され、施設で最後の時を過ごしていた。カールは臨終の供述をしたいとジョーのインタビューに応じる。話を聴き、裁判記録を読むうちにジョーは事件に疑問を抱くようになり、真相を探り始めるが……。バリー賞など三冠、エドガー賞最優秀新人賞最終候補となった衝撃のデビュー作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
429
とても面白かった。ミステリと青春小説のブレンド具合が半々くらいだけれども、弟の発言からの暗号解読の流れや、最後のひっくり返し方などがミステリ好きのツボを心得ている感じ。主人公ジョー・タルバートの人物像系が秀逸で、ただの優しい青年ではなく、やる時はやるどころかかなり戦闘能力も高いというのは新鮮。語り口からは大人しそうな文系少年を思わせるのに、実際は行動力の塊というのがいい。その家族構成もまた物語を面白くしており、あまりにアメリカン・クズなお母さんのインパクト絶大。続編で関係性に変化が訪れるらしいので楽しみ。2024/12/21
seacalf
211
久しぶりに満足。程よくハラハラさせられながらも温かい結末で締め括るミステリは大好き。酒に身をやつす母親に自閉症の弟、恋しい隣人には距離を置かれと大学生ジョーの身の回りの環境はシビアだが、仮釈放中で末期がん患者のカールにインタビューすることから思いもかけない物語が展開していく。読みどころが沢山あってとにかく面白いのだが、酒場の用心棒稼業で学んだ技で悪漢を懲らしめる場面が今迄あまりないパターンで好き。迂闊すぎて危なっかしいが可愛気がある主人公。デビュー作にして読者を心を掴むのが上手い作家さんだ。続編も楽しみ。2024/08/17
遥かなる想い
201
2020年このミス海外第13位。 三十年前の少女暴行殺人の真実を 探る物語である。事件の真相を探りながら、カール・アイヴィンの過去が 殺されたクリスタルの人生が 蘇る。ヴェトナム戦争での悲劇を盛り込みながら、償いの意味を問う …少し 哀しいミステリーだった。 2020/01/03
stobe1904
197
【ミステリ新人賞を総なめにしたデビュー作】大学の英語科目の課題で年長者の自伝をまとめることになったジョーは、老人ホームを訪れ少女強姦殺害犯で、余命少ないため釈放されたカールと出会う。カールとの会合を重ねるにつれてカールの冤罪を確信したジョーは隣人のライラと過去の事件を調べることになるが…。素直な性格で奮闘するジョーへの共感を通して良い読後感を与えてくれた。2作目や別作品をぜひ読みたいと思うほどの出来栄えで、今年のミステリランキング級だと思う。★★★★★2019/06/09
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
183
大学の授業で末期癌患者のカールの伝記を書くことになったジョー。カールはかつて少女をレイプした罪で有罪判決を受けていたが、深く関わるうちにジョーは事件に疑問を抱くように。 ミステリとしては王道?な感じで、展開的にはっと驚く、という感じはそこまでなかったけれど、まず主人公ジョーがとても魅力的。謎をひとつひとつ解明していく過程がとても心地よく、心に傷を負う登場人物たちが心を通わせて、必死で事件に挑む様は胸にぐっときます。秋になると海外作品が読みたくなるけど、とてもいい作品に出逢ったなぁ、と満足な1冊でした。2019/09/11
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