内容説明
徳川幕府は賤民を支配する「弾左衛門」制度を築いたが、13代目に関西の青年を任命した。幕末の動乱期、賤称廃止に奔走し、職業的特権を失い最後の弾左衛門となった弾直樹の生涯とは。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
イトノコ
23
図書館本。1840年。摂津国の穢多の有力者の子・小太郎は、関八州の穢多の頭領である弾左衛門の13代目を襲名。折しも幕末の動乱が迫る中、彼は穢多解放を目指す。/この弾左衛門が主人公の長編小説を書いた著者の思い入れから美化されている部分は多分にあるであろう、また維新後の穢多解放令に本当に彼が果たした役割も不明である。解放令は幕府の体制を否定する明治政府の思惑により出され、当の穢多たちも現状にとどまる事を選んだ。どこかで見たような構図。しかし穢多の革加工技術を活かした軍靴の工場を作った彼の志は本物だったのでは。2021/08/04
りー
23
「弾左衛門」は、江戸時代に幕府から認められ、関八州の穢多・非人の長として、全国の被差別部落に大きな影響力を持った家系。しかし9代目以降は血が続かず、養子をとって家を継いだ。この本で取り上げられているのは13代目、最後の弾左衛門=小太郎=明治に改名し「弾直樹」となった人物。弾左衛門制度は<もう一つの幕府>だったようで、これまで知らずにきたのが不思議なくらい。飛鳥・奈良~鎌倉を経て江戸、明治に至る差別の興味深い歴史を垣間見ることができた貴重な本。要点がまとまっていて、弾左衛門の入門書として最適だった。2021/06/15
ori
11
そもそも弾左衛門とは誰かすら知らずに読んだのだった…。弾左衛門とは江戸時代、幕府から権限を与えられた全国の穢多・非人の頭で13代目が最後。最後の弾左衛門は穢多身分の廃止を願う。明治に身分は廃止されるが多くの者が平民と暮らすのを躊躇し反対したとあった。確かに今より日々の近所付き合いも季節ごとの挨拶も何倍も濃いだろう時代に教育もないままいきなり混ざれというのも無茶な話だ。人権教育もないまま身分の差などないと言われても態度を変えない人がほとんどだろう。制度だけなくせば解決するというものではない。2025/02/02
ウォーカージョン
5
歴史は主観だとはいえ、皇国史観や左翼の史観のように自分の主張のための材料として歴史を利用するのは本当の史観とは言えない。この本には赤いフィルターはかかっていない。13代目の解放への思いとは真逆の「解放運動」。「解放」という名のもとに団結させ縛り付ける。いまだに運動のために解放を許さないのは本末転倒。作者の主観は穢多と農民にあり、明治の元勲を腐す。そういう視点があったのかと感心。当時の農民の実態が知れた。文体はエッセイか小説か。その分13代目の思いが伝わりやすい気もする。2019/06/29
kikimimi01
0
☆32019/04/04