内容説明
死者の無念は食べて解決。洋食異界ミステリ。
匂いに誘われて入った「洋食店 幽明軒」で、無職の和泉沢悠人はアルバイトを始めることになった。厨房で働くのはシェフの九原脩平と妻・香子、フロアは娘の果菜子が担当している。悠人は果菜子に教わりながらバイト初日の仕事をスタートさせた。無事に営業を終えた午後8時、急に店内の温度が下がり、ドアからゆらりと現れたのは幽霊? 幽明軒は、現世に思いを残した死者が訪れる洋食店だった。
死者たちは、好きな洋食を一品オーダーし、それを食べることで過去のわだかまりを解消することができるという。悠人が初めて接客したのは、大正時代に交通事故で無くなった珠代だった。オーダーはライスオムレツ。結婚を誓い合った恋人と食べる予定のまま、些細なすれ違いから食べることの出来ないまま死んだ。シェフの脩平は珠代の話を聞きながら、恋人の本当の気持ちを導き出す(第1話「別れのオムライス」)。
「ナポリタンに込めた息子の気持ちとは」「私は誰に殺されたのか」死者たちが遺した思いに寄り添う“幽冥と顕世のはざまの”洋食店での人間模様を描く、全5話収録の食×異界ミステリー!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
papako
80
なんとなく気になって。死んだ人が幽霊になって訪れる洋食屋さん。想いを残したメニューを注文する。そしてシェフがその想いの謎をといてくれる。洋食の描写が細かくてちょっと笑えた。そこにバイトすることになった主人公。彼のお守りの謎が最後に明らかになって大団円。何か仕掛けがあるのかと思ったけど、素直に読む本でした。なんとなく読み終わりました。2019/02/25
aquamarine
79
「幽明軒」でアルバイトをすることになった悠人。そこは月に何度か、現世に思いを残した死者が最後の晩餐に訪れる洋食店でした。死者たちは食事をし、店主であるシェフに思い残したことを聞いてもらいます。短篇の形で進むそれは、思い残した辛いことを、ひとつひとつふわりと解してくれました。特に最終話では死者の話に悠人自身も関わってきます。死者のいる幽明軒は冷気でとても冷たく寒いそうですが、きっと暖かいお料理と暖かいシェフと店員のおかげで、死者の心はふわりと温かくなっていることでしょう。あっさりめですが優しい読後感でした。2019/06/04
ぽろん
56
私なら最期の食事は何を頼むだろうか。幽冥と顕世を繋ぐ洋食店というとちょっと怖いイメージだったけれど、ハートウォーミングなストーリーだった。とにかく出て来る料理が美味しそう。とりあえず、今日のお昼はオムライスにしよう。2019/01/29
ばう
50
★★★この世を去る、その最期の時に死者が訪れるレストラン「幽明軒」。冥土の土産に好きな洋食を一皿どうぞ、お代はいただきません。そんな不思議なレストランを訪れる死者は皆その胸の内に抱いている蟠りや無念の思いをシェフに打ち明け、納得のいく謎解きをしてもらって安らかな気持ちで天へ登って行く事が出来ます。タイトルだけで何となく図書館で借りてきましたが思いの外良かったです。「感謝のバトン」の話を読んで、私も目に見えないバトンでも誰かに渡せたら、と思いました。これはシリーズになるのかしら?2019/12/11
坂城 弥生
41
最後の晩餐、私だったら何を食べたいと願うだろう?2023/12/15