内容説明
がんを前向きに考えれば、違う世界が見える。
今や2人に1人が罹ると言われるがん。かつてのように「不治の病」ではなく、早期発見すれば完全寛解するものも多い。本書は数多あるがん治療体験記だけではなく、いかにがんという病をポジティブに考えていくという趣旨だ。著者は2度のがん闘病を経験した直木賞作家で、自らの体験から得た「哲学」といってもいい。
がんをただ恐れるのではなく、「がんという病を抱えたもう一人の友人を見つけた」と考えて、あらゆることをその「友人」と相談しながらやりたいことができる。そう考えれば「がんは人を成長させる」し、新たな目覚めのチャンスを得たともいえる。
人生喜怒哀楽、いろいろある。その人生を実人生とだけ考えてしまうと愛憎が入り交じったものになるし、苦悩さえ残る。著者にしても良いばかりの人生だけではなく、実の兄が事務所の金や印税を使い込み、借金漬けにされてしまったこともあった。でも、夢だと思えば、苦しみでさえ夢だから、残るのは楽しい夢の感覚しかないという。そう、人生を夢だと思えば何も恐れることはない。諦めるのではない。「がんになった。さあ生きよう!」と前向きに病と闘えばいいのだ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
メタボン
31
☆☆☆★ がんの体験記よりも、満州からの引き揚げについて話している章が衝撃的だった。何と言っても陽子線治療に興味をいだいた。実際、北大病院で陽子線装置を見せていただいたことがあるが、想像していたよりも大掛かりな装置だった。医療技術もここまで来たか、と感動した。2019/07/12
kanki
17
満州引き揚げの残酷さ。がんを通して「目覚め」「禅、己を知る」、使命に生きる。2023/04/19
わらわら
14
「生きる力」「闘う力」と読んで彼の考え方、病気の向かう姿勢が好きである。人間いつかは何かで死ぬ。死ぬ要因を選ぶことはできない。第一章「がんで死にたい」うんと頷けた。彼が選んだ病院が「国立がん研究センター東病院」死と闘うには人間性のある医師が必要である。彼の作詞した曲について書かれている「恋のハレルヤ」単純に恋の歌と思って歌っていた。違った…。「赤い月」で満州からの引き上げは読んだ記憶があるが…今一度、なかにし礼氏の本を読んでみようと思う。2019/03/25
Hideichi Sekiya
7
2度のがん体験を乗り切った著者、人生を達観した感があり2019/01/24
忽那惟次郎8世
6
実は私もガンサバイバーです 肺癌の手術で入院した時に病院の喫茶室にあったので読んだ 自分が実際にがんに罹患し 術前の不安な気持ちや、自分ががんとどう立ち向かっていくのか、全くシンクロナイズして読むことが出来た。「がんはある意味で情緒を持つ病気であり、なおかつかかった人を成長させてくれる性格を持っている」この一節を読んだ時に この本が神様が私にくれたと思ったほどだ。 手術前の数日貪るようにして読んだ。それ以降 なかにし礼作詞の歌謡曲も聞くようになった。 また、満州引き揚げの自叙伝の部分も素晴らしい内容2019/10/01