内容説明
父親を裏切り、男と失踪した長女に、複雑な気持を抱いている父親は、次女の桂子にすべての夢をかける。だが、その桂子も父親の意見をきかずに、OLになってしまう。未知の世界は、桂子に新たな目を開かせるのだが……。愛と友情に悩む乙女心と、父親の哀歓を鮮かに描いた傑作長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カノープス
4
結婚は個人間の愛情だけでなく、家族や社会的なつながりを重視する傾向が強く、親が結婚相手の選択に介入することが一般的だった時代。ヒロインが自分の人生に悩みながらも、家族の期待や社会的な枠組みの中で結婚を考える姿が描かれる。この点は、個人の自由恋愛と伝統的な家族観の間で揺れる当時の若者の心情を反映していたように思う。子の結婚に対する親肩入れ度合いが、今の感覚からすると何とも鬱陶しく違和感がある。サラリーマン物の元祖と言えば源氏鶏太、だが、最近読んだ何作かは、会社内の恋愛やら結婚に終始するばかりで残念。2025/07/05