内容説明
江戸は中期。浅草川に浮かぶ島、日本橋の箱崎。ここは海水と川の水が入りまじり、先にある中洲で水の流れが三つに分かれるので、別名『別れの淵』ともいう。川辺の小さな船宿若狭屋を切り盛りするお涼は、情に厚く面倒見の良い女将だ。彼女の人柄からか、はたまた色々なモノが流れ集まる土地柄なのか、若狭屋にはちょっとさみしい魂がふらりとやって来る。人間もあやかしも隔てなく――。狐憑きと噂される花魁や川に消えた子供、息子を捜す山姥……。あの世とこの世をつなぐ不思議な船宿で女将が出会う、愛おしくてあたたかい、八つのあやかし話。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sin
83
本家“しゃばけ”の登場から凡百の類似作品が誕生してきたが、これは本物といえるようだ。かといって本家とは時代考証からして立ち位置が異なっているのは確かで、本家が江戸と云うキーワードに乗っかったファンタシーなのに比べて、本作は妖かしの登場する時代劇であると云うこと(但し作者は時代小説そのものをファンタシーと云っておられるが)…何はともあれそれぞれの物語に工夫が凝らされていて面白く、また続きが出たら読みたく思える作品に出会えた。2018/12/08
アルピニア
57
日本橋箱崎の小さな船宿「若狭屋」の女将「お涼さん」をめぐる八つの短編。この世とあの世、人と人ならぬものの出会いが独特の距離感で描かれていると感じた。あれは人?幽霊?妖し?どの話も不思議な余韻が残る。特に「狐憑き」と「三途の川」が良かった。「江戸の夢」ではお涼さんの来し方が明らかになる。シリーズのようなので、次巻もぜひ読みたい。2019/02/13
ポチ
50
ほんのちょっとだけ向こうの世界と繋がり、その住人とのやり取りが、折口さんらしく優しく綴られています。2019/02/06
penguin-blue
38
人に見えないものが見える船宿の女主人お涼が絡んだあやかし話の連作。後半はお涼の過去に溯り、不思議な力の秘密を説き明かす。ひとつひとつの話には惹かれるものもあるのだけれど、連作として捉えると何だか物足りない。主人公のお涼のイメージがどうもうまく浮かび上がってこないのと、周りの人々の印象が薄いのと。シリーズものになる作品の鍵は、主人公だけでなく周りを取り巻く座組み。両親以外に印象に残る常連が出て来てユニットの魅力で勝負できるようになれば先へとつながっていくかも。中では「狐憑き」「鰐口とどんぐり」が好き。2019/03/28
リリー・ラッシュ
24
「何言ってるんです。人は生きている限り中途半端なもんでしょ」このお涼の父の台詞にスっとしました。先が暗いのに先ばかり見て歩くのではなく、自分の足元だけを見て歩き、今できるこことをたとえつまらないことに見えても一つずつやっていって大成した仲蔵の話。「運命ってのはたとえ決まっていても、それをどんな心持ちを持って進んでいくかだけでも違ってくるもんだと思いますからね」これもお涼の父の台詞。心に響きました。どのあやかし譚も良かったけれど「江戸の夢」「三途の川」は特に私好みのあやかし譚でした。続編も楽しみです♪2019/05/30
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