内容説明
家の中で迷子になっていた――。見慣れた部屋が森に変貌し、水で溢れる。迷子の相棒は歌、偶然、そしてネズミ。海辺の老人に導かれ、言葉を話さない少女アゲハ、コンパス売りのハジと出会い、自身のなかに湧きあがる尽きせぬ記憶の果てに見た、この世界の姿とは。地上に宿るすべての生が時空を超えて響きあう深遠なる物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あじ
37
カーテンを閉めた試着室で、幼き主人公が鏡の向こうへトリップする。自分という“実体”がうろんな“実態”を体験した確かな感覚を頼りに、成長した主人公が生きている実感を反芻したいがため「家の中で迷子」になる。内から溢れる水の源流(脈々とした生命の襷)を巡る、魚眼小説と例えたい。主人公が本当の意味で迷子になったのは、二度目の試着室での事だったのだろう。冒頭の混線が肝ですね。※魚眼小説(個人的造語)。歪んで見える…難解さを表現した。 2018/10/12
信兵衛
21
次々と移り行くその世界での状況、その中で出会った者たちとの交流、それなりに楽しめている感じがします。2018/07/13
みき。
9
本の中で迷子…2018/08/07
mamaboo
6
タイトルが面白くて。でも私が本の中で迷子。うーん・・・2018/07/19
kaz
5
壮大な夢の中を自分が風になって吹き抜けていくような感覚で読んだ。現実離れしていて、どこにもないはずの光景も不思議とリアルに感じられた。小説というよりも、詩のような物語。音楽のようにただこの本の中の世界に浸り流されていくのが次第に癖になって、気づけば読み終わっている。2019/10/19