内容説明
大坂の生國魂神社に笑いの神様がいる――。その名は米沢彦八。まだ笑いが商売になっていない江戸中期に、大名の物真似で権力に歯向かい、滑稽話で聴衆の心を掴んだ男。仲間の裏切りや盗作騒動など、多くの挫折を味わいながらも自分の笑いを追求していく彦八。笑いで人を救い、笑いの為に一生をなげうった愛すべきぼんくら男、波瀾万丈の一代記。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
H!deking
83
いやー久しぶりの木下さん。上方落語の元祖、米沢彦八さんのお話ですね。存じ上げませんでしたが実在する方らしいです。いやこれなかなか面白いですね。ツッコミというか合いの手がナイスです。うち嫁が大阪で自分は東京なので昔よく大阪と東京のお笑いの違いを話しましたが、江戸と大坂の時代から違っていたんですね。合いの手とか語り口調のテンポ感とかも含めていろいろ勉強になりました。2023/11/08
大阪魂
76
大阪落語ってこないして生まれたんや!ってむちゃ勉強なったし楽しめた本!書かはったんは「宇喜多の捨て嫁」の木下さん!こんな軽いんも書かはるんやってびっくり!大阪落語の元祖・米沢彦八さんは江戸初期の難波で生まれはって幼いころから笑かす達人、でもほんまに笑かしたいのは好きになった女の子・里乃…江戸で鹿野武左衛門、京都では露の五郎兵衛ってお笑い名人と絡み、苦労しまくった末に俄か大名で大阪・生玉神社で笑いの神様に!最後は名古屋へ…最初の寄席小屋は名古屋にできたんってびっくりやった!生玉さんの彦八祭、また行きたいなあ2021/08/28
nemuro
60
“しりとり読書”の130冊目。2019年8月、JR大阪駅に直結の『ブックスタジオ大阪店』にて、帯の「2019年大阪ほんま本大賞受賞作」が気になって。個人的年中行事「甲子園参戦!&関西書店巡り」時の購入だった。その厚さ(本文で545頁)もあって(本棚の片隅で)ヒッソリと佇んでいたところ、ならばと指名。「まだ笑いが商売になっていない江戸中期。愛すべきぼんくら男・米沢彦八、波瀾万丈の一代記」。巻末、「参考笑話」「参考文献」の多さに吃驚。うむっ、これは面白い。本棚にはデビュー作『宇喜多の捨て嫁』も待機中で愉しみ。2025/04/14
おさむ
44
先日、大阪を訪れた際、梅田の紀伊国屋書店で手に取った1冊。2019年「大阪ほんま本大賞」だそうですが、たしかにこれ大阪らしい話やわ(^^)。大阪生まれの彦八が笑いを武器にのし上がっていく人情話。笑いあり、涙ありの人生模様。いくつもの苦難を乗り越えて成長していく浪花節の物語は実に500ページを超す厚みです笑。演劇にぴったりだなと思うてたら、案の定、松竹劇場で鶴瓶の息子が座長になって今年、公演してました(巻末に作者との対談もあり)2019/12/18
イトノコ
40
江戸初期、大阪難波村の商家の次男坊として生まれた彦八は、「人を笑わせる」のを生業とするため江戸に修行に出る。実在の人物で、上方落語の祖のひとりとのこと。話としては朝の連ドラ的というか、困難→解決、挫折→再出発を繰り返すサクセスストーリー。そこに淡い初恋なども絡めて、ほろ苦い読後感に仕上がっている。「秀吉の活」「宇喜多の楽土」と同系統の、「白木下」とでも言うべき作風かな(対して「捨て嫁」「人魚」あたりが「黒木下」)。主人公の彦八の愛すべきキャラクターと相まって、サクサク読み進められて楽しい読書だった。2019/05/23