鐘は歌う

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鐘は歌う

  • ISBN:9784488010843

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内容説明

ロンドン塔からレイヴンが消え、橋という橋は落ち、ロンドンは瓦礫の街と化した。文字による記録は失われ、新たな支配者〈オーダー〉は鐘の音で人々を支配している。両親を亡くした少年サイモンは、母が遺したひとつの名前とひとつのメロディを胸に、住み慣れた農場を離れ、混沌のロンドンに向かった。そこで彼は、河の底から呼びかける不思議な銀色の音を聞き、奇妙な白い眼を持つ少年リューシャンに出会う……。世界幻想文学大賞受賞、ブッカー賞候補にも挙がった幻想文学の名作登場!

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

紅はこべ

114
ファンタジーかと思っていたら、まさかのディストピア。美しいことは美しいが。焚書され、文字が奪われるなんて、活字中毒者日テレとっては最悪の地獄だな。いきなりのBLにびっくり。レイヴンはポオの大鴉を意識してるのかな。大崩壊が起こったのは英国だけ?2019/07/03

☆よいこ

72
イギリスロンドンを舞台とした近未来ディストピアSF。音響武器で文字文化は破壊され、人々は記憶を保持する力を失った。母が亡くなり、ひとりロンドンにやってきたサイモンは、泥の中からレデイ(銀の塊)を拾うグループに入りその日暮らしをする。朝と晩に鐘の音が鳴り響き、日々記憶が無くなる恐怖と不安に怯えながら暮らす。しかし、サイモンには物の記憶を読み取る特殊な能力があった。盲目の少年リューシャンと共に、サイモンは〈オーダー〉に対抗し、鐘を破壊する為に立ち上がる。▽ギヴァー系。前半は専門用語難解。表紙が好み。2020/07/12

キムチ27

67
ファンタジー作品に舞台設定時を問うのは野暮だか、徒弟制度・ギルド・シタデル等の言葉から中世の香り。大崩壊後の倫敦。街は崩壊し、逃げ出した二羽のレイヴンが記憶と言葉を司る。記憶保持不可の民、日々を怠惰にいきる。会話しても記録不可。昔の記号にすぎぬ文字。癒しのカリヨンには一体化のストーリーという洗脳の力を持たせている。メモリー・キーパーであるサイモン~母からの伝えは少ない。内容的にディストピア小説と言えるが、よみ始めはなかなか世界観に入っていけず、音楽の専門用語の壁が厚かった。もう一人のヒーロー リューシャン2020/10/06

ゆかーん

62
長かった…。世界幻想文学賞を受賞している作品ですが、自分自身が幻想の世界に溶かされてしまいそうでした。これは、記憶することができない人々の世界を描いた、ユートピア小説。唯一記憶を保持できる「記憶保持者」という選ばれた人だけが、過去を知っていて、朝と夜だけ鳴り響く鐘の音が、唯一人々の記憶を呼び覚ます鍵となっているようですが…。幻想という言葉通り、現実と非現実の狭間で巻き起こる事件に、自分自身が雲散霧消しそうでした。「この幻想的な雰囲気を感じとって理解せよ」という著者からのメッセージが聞こえてきそうな物語。2019/08/02

えりか

55
素晴らしい。ことばは力を失い、音楽が威力をもっている世界。音楽による思考の支配は、何も知らない人間たちを統制し、記憶を奪う。個はなくなり全体へとなる。音楽は美しい。整えられたハーモニー、美しいメロディは聞くものの心に安らぎを与える。そこにずれも外れも許されない。だが、それは音楽だからであり、人の場合、個人個人でバラバラな記憶や思考や感情こそが美しいのではないだろうか。バラバラな人々が奏でるからこそ、世界で一つの奇跡のようなハーモニーが生まれると私は信じたい。「1984年」「華氏451」を思わせる物語。2019/01/16

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