内容説明
鴎外がビールに、荷風がウィスキーに託した思いとは? 本書は酒が様々なイメージで登場する傑作を厳選。古今東西、人類の友である酒になぞらえた憧憬や哀愁は今でも現代人を魅了し続ける。近代文学に足跡を残した漱石、露伴、安吾、谷崎、太宰ら16人の作家と白秋、中也、朔太郎ら9人の詩人、歌人による魅惑のアンソロジー。
収録作品
屠蘇……夏目漱石「元日」
どぶろく……幸田露伴「すきなこと」
ビール……森鴎外「うたかたの記」
食前酒……岡本かの子「異国食餌抄」
ウィスキー……永井荷風「夜の車」
ウィスキーソーダ……芥川龍之介「彼 第二」
クラレット……堀辰雄「不器用な天使」
紹興酒……谷崎潤一郎「秦准の夜」
アブサン酒……吉行エイスケ「スポールティフな娼婦」
花鬘酒……牧野信一「ファティアの花鬘」
老酒……高見順「馬上侯」
ジン……豊島與志雄「秦の出発」
熱燗……梶井基次郎「冬の蝿」
からみ酒……嘉村礒多「足相撲」
冷酒……坂口安吾「居酒屋の聖人」
禁酒……太宰治「禁酒の心」
●諸酒詩歌抄
上田敏「さかほがひ」
与謝野鉄幹「紅売」
吉井勇「酒ほがひ」
北原白秋「薄荷酒」
木下杢太郎「金粉酒」「該里酒」
長田秀雄「南京街」
高村光太郎「食後の酒」
中原中也「夜空と酒場」
萩原朔太郎「酒場にあつまる」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kinkin
101
文豪たちの酒にまつわる作品集。夏目漱石からはじめ理、芥川龍之介、永井荷風、谷崎潤一郎他。ただ文語体の文章は私人は読み通す力なく挫折。岡本かの子ぐらいしかしっかり読めなかった。読んだというよりページをめくるのが主になった。読書というのはこういうときもあるか・・・料理と一緒でたまには苦いものを食べたくなる、そんな感じの本。いつも甘いものを食べているせいなのか^^2023/04/14
優希
39
文豪たちの酒にまつわるアンソロジーでした。テーマは多岐に渡り、読者を酔わせます。下戸でなければそれぞれの作品をより深く味わえたように思いました。2023/12/11
SIGERU
27
文豪たちによる美酒礼賛かと思いきや、酒はむしろ添景。テーマは多岐に亙っている。例えば、荷風や谷崎の短篇は、むしろ美女にスポットが当てられている。とはいえ、文章そのものに上質の微醺成分が含まれており、読み手をしたたか酔わせる。 高見や豊島の大陸物は、当時としては華麗なエキゾティシズムに溢れていたのだろうが、もはや遠い異国のノスタルジア以外の何物でもない。 お初の吉行エイスケは興味をもって読んだが、これとてもモダン文学の残花、あだ花だろう。 むしろ、安吾や太宰による、戦争中における酒呑みたちの風景が出色だ。2021/11/07
tsunemi
18
近代の文豪達の作品から酒に絡んだ箇所を抜粋し短編集とした作品。漱石 露伴 鴎外 荷風 芥川 谷崎 安吾 太宰他多数の作品が楽しめ一冊で何回も美味しい、つい酒が進みすぎるのが難点。酒のマニアックさで言えば近代というのもあり物足りないが、その分編纂者長山さんが解説で詳しく酒の説明、文豪達のなりを触れて補足している。巻末は酒に絡んだ詩歌集、こちらは純粋に酒好きが楽しめる作品が多数。個人的な好みは「夜の車」「彼 第二」「馬上候」。2020/03/20
ophiuchi
11
文豪たちの短編小説は「酒をめぐる」というよりも「酒が出てくる」ぐらいの感じだけど、巻末の詩篇は「酒に溺れる」。酒には詩がよく似合う。2018/09/30