内容説明
自殺は個人的気質の結果か、それとも社会的事実か? 十九世紀ヨーロッパにおける自殺率の統計を仔細に分析し、自殺を「自己本位的」「集団本位的」「アノミー的」「宿命的」の四タイプに分類。生の意味喪失や疎外感など、現代社会における個人の存在の危機をいち早く指摘した、近代社会学の礎となる古典的名著の完訳。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てれまこし
13
19世紀は自殺の時代であったらしい。自殺は社会学的方法が応用される素材であるが、それ以上のものである。保守派は自殺増加を近代病と定義して、とくに個人主義を攻撃していた。政治からの疎外、宗教の衰退、家族の解体を自殺増加の原因として特定するデュルケムは、保守派の立場に近い。だが彼は保守派の攻撃から共和政を守るという目的がある。そこで彼は自殺の原因の社会的統合というレベルにおく。そうやって国家、宗教、家族の再強化という保守派の提言を斥けようとする。だが、彼が代わりに引っぱり出してきたのは職業集団という古い組織。2022/05/10
ドラマチックガス
7
ウェーバー『プロ倫』(←一発変換できて驚く)とならぶ社会学の2大古典。分厚いけれど、資料読解が半分くらいあり、事例紹介も多い(しかもこれが面白い)ので見た目よりはずっと読みやすい。「アノミー的自殺」を「自己本位的自殺」と切り離して分類できるところがデュルケムの凄さだと思う。また、両者の違いが正直よくわかっていなかったけれど、数多く読んだ解説書よりもこちらの方がずっとわかりやすく腑に落ちた。2021/04/17
セイタ
6
社会学の古典!社会学の著作を学ぶ授業の課題図書の1冊だったので読んだ。15時間で読了。社会学の3大巨頭の一人であるデュルケムの代表作だけありすさまじかった。それまで個人的な問題と考えられていた「自殺」という行為の裏側にある要因を分析し、それを「自己本位的自殺」「集団本位的自殺」「アノミー的自殺」と3分類していくまでの論理の展開が非常に緻密である。それぞれの言葉の定義をこれ以上ないほどに丁寧に行い、考えられる反論に片っ端からつぶしていくその姿勢はまさに社会学者の鏡である。他の著作も読んでいこう。2023/11/06
あんかけ
5
3週間くらいかかって読み終えたぞ!!! 「なぜ自殺するのか」について、100年ちょっと前のフランスのデータを見ながら分析する本。300pくらいデータを見ながら「これか?違うよな」みたいな話を延々としているので中盤まで苦しい。それを越えるとそれまでの前提を踏まえつつ、4分類の自殺について腑に落ちる解説をしてくれる。死なないためにのオチは昔の欧米すぎるが、今でも通用しそうな話であった。現代日本のデータを見たら著者は何と言うだろうか……。書店の自殺フェスみたいなところで買ったが、買ってよかった。2023/04/18
owl&shepherd
5
たら、れば、かも、かな、...したかと、...とも、などなど、ちまたにあふれる逃げ口上が、本物の社会学者の著作には皆無。言い切るにはこれくらいの知見、覚悟、労力を要すること、彼ら知識人のロジックの組み立て方がよくわかった。それが収穫。とても真似できそうにない。こちらの仕事柄から、印象に残ったのは、訳者さんの解説のひとこと。 「翻訳とは永遠に終わることのない奥行きのふかい仕事だということをあらためて思い知らされている」2019/04/24