内容説明
日中戦争は近代日本の対外戦争の中で最も長く、全体の犠牲者の数は日米戦争を凌駕する。なぜ、開戦当初は誰も長期化するとは予想せず、「なんとなく」始まった戦争が、結果的に「ずるずると」日本を泥沼に引き込んでしまったのか。輪郭のはっきりしない「あの戦争」の全体像に、政治、外交、軍事、財政などさまざまな面から多角的に迫る。現代最高の歴史家たちが最新の知見に基づいて記す、日中戦争研究の決定版。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
34
「決定版」という強気なタイトルだが、その名に恥じない著作だと思う。日中合同の歴史研究に携わった学者が、デリケート故に報告書に採り上げづらかった問題も含め、新たな参加者を含んだ研究会の成果だそうで、特に中国側の見方が随所に反映されているのが新鮮だ。「宣伝下手」という日本人の特性と、特に蔣介石夫人の宋美齢の果たした対アメリカ宣伝のコントラスト、終戦時の中国では日本軍、国民政府軍、共産党軍が大陸で勢力を張っておりその中で日本軍が最も強力、それを武装解除に持っていく道筋など、他書ではあまり取り上げられていない。2018/11/25
樋口佳之
30
二〇〇六年秋の胡錦濤国家主席と安倍晋三首相との合意に基づき、同年一二月から開始された共同研究は、〇九年末に最終会合を終え、翌年に報告書を一部公表して幕を閉じた。/その研究を引き継いでいる内容。一部公表して幕を閉じるのはもったいなかったのでは。一致点、不一致点を含め全て公表して、何度でも歴史認識をすり合わせる方がよかったのでは。/日中双方の問題を語るという内容になっていて、新しく知る(というか意識に残る)事もあるけれども、大陸で行われた戦争だということを忘れてはいけないと思いました。2018/12/05
wiki
22
露烏戦争の成り行きを見ながら、日中戦争が二重写しに見える部分が多くある。網羅的に述べる内容で、現代に論点となる様々な問題の因縁が端的に綴られており、新書として「決定版」と呼んでも違和感はない。にしても、民衆の意志は「根無草」と呼んでその通りだと思う。盧溝橋事件、連なる通州事件により社会大衆党が軍部支持に周り、過半の勢いは戦争へと一気に傾いたとある。センセーショナルな事件で爆発したわけだが、SNSが発達し、しかも「あなたへのオススメ」が常に表示される現代において、この危険性は非常に高まっているのではないか。2023/07/16
紙狸
21
2018年刊行。日中戦争について基本的なことを確認しようと繙いた。「日中歴史共同研究」終了後、日本側の参加者が勉強会を続けていたことが土台となった本。5人のしっかりとした専門家によるまっとうな本だ、という印象。地図をもっと入れてほしかった。日本軍は当初短期決戦での勝利をもくろんだが、中国側の持久戦略に応じざるを得なくなり、戦線は基本的に膠着した。1937年の第2次上海事変は、「蒋介石が主導的に導いたものであった」。2023/05/23
小鈴
19
教科書で見知った点々とした用語がこの本を読んでつながりました。歴史のターニングポイントは上海戦なのではないかと思いました。陸軍が乗り気ではない、海軍の推した上海戦が決め手になり太平洋戦争突入の契機になったのでは。海軍は自分の権益のために上海戦を推したし、海軍の航空隊は圧倒的で制空権を抑え、陸軍は対ソ戦のために気鋭の隊員は残し質の低い連隊構成、揚子江をバックにした南京の地形。蒋介石の甘い見通しと最後は逃げるように去ったため「南京大虐殺」が発生。両者の要因が相まっての虐殺が起こるべくして起きた。。。合掌。2021/04/06
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