内容説明
脚本家の卵である健児は、同窓会で夫と死別したばかりの瞳と再会し、彼女のマンションに居候する形で再婚。前夫の不倫相手や母親など、大切な人を失った彼らが織りなす奇妙な人間関係の行方は?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
相田うえお
99
★★★☆☆22089【ギリギリ (原田ひ香さん)k】健ちゃん、いい奴だ〜!って、未読の方は何言ってるか分からない?本作品、目線交代型の章構成作品。主人公の健児は旦那に先立たれた瞳と結婚したんですけど、その瞳の前の夫の母親である静江と何故か顔馴染みになっていくんですよ。静江からしてみれば健児との関係は『亡くなった息子の嫁の旦那さん』と、ややこしや〜っつーか、親戚でもなんでもないし普通は関係ないよね。うん!つまりこれが本のタイトルの謎でしたか。個人的に思うのは、急に離婚だなんて、瞳さ〜ん!マジかぁ〜!と。2022/09/29
ノンケ女医長
86
作品を描いた、健児。いろいろな人に読まれ、意見を頂く。中には酷評もあったが、筆を重ねた結果、評判は上々になっていき、実力派俳優によってテレビドラマ化されることになった。キャストと俳優が顔合わせした第一回目の読み合わせで、原作者は迫真の演技を目の当たりにし、泣き崩れてしまう (275頁)。どうして泣いたのか。感極まっただけではない。芸術に、全てを注ぎ込める人だからこその涙だと思う。本当に気遣いの多い、健児の儚さ、繊細さが色濃く描かれていて、とても良かった。2023/01/06
レモン
49
どの登場人物にもあまり感情移入できなかったが、彼らの苦しく生きづらい気持ちは伝わってくる。瞳は特に、真面目すぎてネガティブに考えすぎるから余計にしんどいだろうな。振り回された健児が可哀想だったが、瞳の選択も彼女の人生において前を向いて生きるためには必要だったし仕方がない。最後の方の吹っ切れた静江さんが、爽やかで気持ち良かった。個人的には、10年前に読んでいたら刺さっただろう。2022/06/17
さおり
49
夫を亡くし、ほどなく中高の同級生と再婚した瞳。再婚相手の健児。亡くなった夫の母親である静江。この3人が主な登場人物。変なの。何が変って、健児と静江の仲が良いのです。なんかね、笑えるんだけど、泣ける。そんなに一生懸命考えなくてもいいよ、そんなに人に気を使わなくってもいいよ、と3人ともに言ってあげたくなります。でもさ、考えても仕方のないことを、始終考えながら人は生きていくのでしょうね。2019/01/13
読書のーと
48
夫・一郎太を亡くした瞳、瞳と再婚した健児、一郎太の母親である静江…。 それぞれの登場人物の視点から、今は亡き一郎太を通して物語は展開される。 登場人物同士の関係性は、普通であればお互いにあまり関わりたくはないであろう義理と義理との関係性。 そのため、登場人物同士の関わり合いに少し不思議な気持ちになるが、人と人との御縁というのは、案外こういうところから生まれることもあるのかもしれないと感じた。 義理と義理との関係性の中で描かれる人間模様が面白い。 小説のラストで、著書のタイトルである『ギリギリ』に納得した。2023/01/31