内容説明
織田信長の重臣だった丹羽長秀の死後、丹羽家に対する豊臣秀吉の仕打ちは苛烈を極めた。一二三万石から四万石への大減封、家臣団難散の中で命じられた、北条攻めの小田原出兵。窮地に陥った城好きの若殿長重と、空論(うつろ)屋と呆れられた新米家老の江口正吉は、命を賭して御家再興に挑む――。秀吉を畏怖させ大谷吉継ら大名を驚嘆させたうつろ屋の、起死回生の策とは!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
146
織田信長に仕えてた丹羽長秀(丹羽家)。織田信長の頃から、江戸時代まで丹羽家に仕えた江口正吉(えぐちまさよし)の話!どの時代にも義に厚い漢がいると改めて思い知らされた。先見の明で見出した策が空論(うつろ)と言われても何のその!戦に政にうつろ屋として、縦横無尽に本領発揮して、読んでて痛快!爽快!正吉は、将棋の格言でいう『四隅の香を見る』『盤面全体を見よ』と言った軍師としての能力ではないだろうか。また新たな新進気鋭の時代小説作家が誕生したかもしれない。2019/07/19
maito/まいと
20
文庫版再読。やはり、中盤までの江口の“うつろ屋”ぶりと、彼を温かく見守り、利用し導く主君・丹羽長秀と長重の存在がいいアクセント。僕は“うつろ屋”ぶりは、円熟した大戦略家への道に進むのかと思っていたけど、作品内の解釈は、テクニックや才能におぼれるのではなく、理念(魂・目標・心)を持った才覚者になれ、ということだったんだなあ。再読した今でも前者方向の方がおもしろいと思うけれど、後者でも感じるところはたくさんあり、それはそれで見事な作品だったと思う。余談だが、巻末の武将図鑑と参考文献の膨大さにビックリ。2018/02/23
Book Lover Mr.Garakuta
19
面白かった。知らない人物や出来事も多く、丹羽長秀の優秀さを知る事が出来てよかった。歴史については、詳しく無いし暗いので、もっとこの手の本を読みたくなりました。筆者の豪快で秀面な執筆ぶりは読み手を引き離さないと思った。2021/02/03
ぺぱごじら
17
時代小説は、色んな資料・考証にあたり、それを如何に「そうであればどんなに良いか」と読み手に感じさせられるかが作家さんの腕の見せ所と考えていますが、本作は正に「そうであって欲しい物語」で、本当に感動しました。丹羽家かぁ、絶妙なところをついてくるなぁ(笑)。2018-152018/01/29
トラジ
11
丹羽長秀、長重親子とその家臣、江口正吉との主従関係が丹羽家の栄枯盛衰を通して描かれている。マイナーな題材を新鮮な切り口で掘り起し、時代のうねりと戦のあやを感じる作品に仕上がっている。大阪夏の陣で長重の許に駆け付けた正吉に思わず涙が・・・。2018/01/23