内容説明
大手電機企業が発表した巨額の「不適切会計」。捜査二課の小堀秀明は、背後に一人の金融コンサルタントの存在を掴む。男の名は、古賀遼。貧しい炭鉱街の暮らしから妹を救うため、体力頼みの場立ち要員として証券会社に就職。狂乱のバブルを己の才覚のみでのし上がった古賀は、ある事件をきっかけに復讐を始めるのだった――。欲望に踊らされた男たちの終わらない闘いを描く経済サスペンス。(解説・磯山友幸)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
96
馬鹿なマスコミとその情報を鵜呑みするだけの愚かな世間—、こんな挑発で幕が開く、経済界の裏側を鋭くえぐった経済サスペンス劇。とてもリアルで面白い。大手企業の粉飾決算の隠ぺいを裏で操る男と、企業専門の背任横領・贈収賄などの企業犯罪を暴く警視庁捜査二課のエリート刑事との対峙、知能戦が手に汗を握ります。苦言を一言。ストーリーはとても面白いので、533頁のうち株式投資など経済専門用語まみれの難解な解説部分を整理して、人物中心にまとめてもらえたら、もっとすっきりと読みやすく分かりやすい物語になると思いました。2020/01/12
アッシュ姉
83
大手電機メーカーが発表した巨額の不適切会計。捜査二課三知の小堀は粉飾決算を疑い、裏で記者会見まで演出した金融コンサルタントの古賀を追っていく。古賀と小堀の二人の目線で時代を前後しながら進んでいくが、椎名桔平さんが演じた古賀に肩入れしながら読んだ。プロローグの語りと本編の人柄がなかなか繋がらなかったが、最後のエピローグで結ばれて思わず嘆息。真相や結末はさもありなんでノンフィクションのようだったが、あの人の変わり身だけは腑に落ちなかった。ともあれ読み応えがあり面白かった。2020/07/02
toshi
66
2017年の長篇経済ミステリー小説。バブル経済の勃興からその終焉までが、分かりやすい筆致で描かれています。本書は、証券のフィクサーとなった古賀のパートと、古賀を追い詰める捜査2課の管理官の小堀のパートの2つが綴れ織りのようなかたちで展開されて行きます。不思議と古賀を応援してしまう自分に気付きます。果たしてラストは?読んでのお楽しみです。2025/01/25
PEN-F
41
アメリカのサブプライムローンも一種の不発弾だったんだろうな。まあアレは不発どころか思いっきり炸裂しちゃったからリーマンショックの引き金になってしまったんだろうけども。日本もバブル崩壊後に行き場を失い表に出す事のできなかった桁外れの負債が今も日本経済の裏側の奥深くに眠っているのだろうな。それら全ての不発弾が破裂した日にはメガバンクの1つや2つ、地銀なら20や30は軽く吹っ飛ぶのかしら? 2024/01/15
たぬ
36
☆4 金が絡むと人間はこうも薄汚く生臭くなるものなのか。殺しにまで手を染め国のトップすら取り込んでしまうとはなんとも恐ろしい世界である。個人的に抱いていた株や投資へのハードルがこれでますます上がった。耳慣れない金融用語が頻出しているので身を入れて読んだ。普段より左脳をめいっぱい使っただけにかなり疲れたが読み応えは十分だった。2021/03/03