内容説明
一九〇三年に生を受けるも生い立ちがまったく異なる二人の男が、関東大震災をきっかけに思いもよらぬ運命へと導かれる。
ジェフリー・アーチャー『ケインとアベル』を思わせる傑作大ロマン小説!
ひとりは、東北の寒村の生まれの柾木謙吉。
もうひとりは、大阪の銀行家の息子で、何不自由なく育った水町祥太郎。
講義録の出版で大成功をした笠尾喜十郎の家で書生をしていた謙吉は、関東大震災当日、喜十郎の娘・華枝を、華枝の腹違いの兄・喜之が手篭めにしようとしている現場に遭遇し、勢いあまって殺してしまう。
浅草へ外出していた喜十郎一家は全員亡くなり、震災の混乱に乗じて謙吉は喜之を演じるようになった。
謙吉は、喜之が行く予定だったロンドン留学で学力や人脈を培い、帰国後、内務官僚になる。
一方、祥太郎は、ひょんなことから、映画監督や地方紙の社長と知り合い、映画制作に関わることに。
関東大震災から終戦直後までを背景に二人の男の波乱万丈の人生が、東京・大阪の“二都”から上海や満州国の首都・新京(いまの長春)までもを舞台に展開します。
笑いあり涙もあり活劇あり、そして踊りや歌も入った、まさに大衆小説の王道的傑作です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
117
芦部さんの4冊目の本です。二都物語とあるように、東京と大阪あるいは後半になっての中国の二都が主な舞台となっています。新聞小説を再度若干手直ししたようで盛り上がりや場面転換が多く私には楽しめました。二人の同年代の若者あるいは中年までの話の日本の関東大震災から戦時中の話などもきめ細かく描写されています。「ケインとアベル」を思い出すとともに、村上もとかさんのコミック「龍(ロン)」を思いだしました。映画界についての話が大分を占めているので。また両方の本とも甘糟元大尉が比較的好人物に描かれていました。2019/09/24
ダイ@2019.11.2~一時休止
76
東京と大阪の主人公の物語?。作者の書きたかった新聞小説&波乱万丈のロマンものらしい。個人的にはこういうジャンルより森江の方がいいんですけど・・・。2018/12/04
igaiga
23
これぞエンタメといった感じの1冊。関東大震災と阪神大震災を両方とも経験した人っていたかもしれないんだー。この本を読むまでは全く違う時代の話と思ってました。個人的には水町さんの方が好きではあるが、結婚するなら征木さんの方だな。うむ。2019/02/06
橋川桂
17
少しネタバレになるけれど、読み終えたのが他でもない1月17日。芦辺先生のミステリ以外の作というと、いつ以来になるだろう。二十世紀初頭、大阪と東北でまったく違う境遇に生まれついた二人の男性を主人公に描く、昭和前半史。元が新聞連載ということで、各章ごとが短く、私にはちょっとスピーディすぎるところもあったけど、9時間強の分量をすいすい読めた。2019/01/18
まえぞう
11
著者が高校の同級生なので初めて読んでみました。大正デモクラシーから昭和の戦争へ続いて行く時代を背景に、東京と大阪、上海と満州新京の二組の二都の物語。活動写真のようなリズム感で、ほんとに映画を見てるようでした。こんな作品を書くんですね。2018/12/10