内容説明
末期がんの母が人生最後の二週間を過ごしたのは、長崎の高台にある聖フランシスコ病院のホスピス病棟だ。悲しい別れの舞台だと思っていたホスピスで、母と私は思いがけず素晴らしい時間を過ごすことができた。特にシスター・ヒロ子の存在はとても大きい。小さな身体でスピーディーに移動し、笑顔とともに発せられる一風変わった言葉の数々に、私たちはどれほど救われたことだろう。もう母と会えなくなる寂しさや悲しみに心を奪われている私にシスターは言った。「死んでいく人は、残される人に向けてたくさんの贈り物をしているの。それに気づくことが逝く人に対してできる最大のことですよ」。シスターの言葉にハッとして顔を上げて気がついたこと。それは、母が残してくれた大きな贈り物の一つは、「シスターとの出会い」だったということを。かけがえのないシスター・ヒロ子との交流は、誰にでもできる慈愛に満ちた看取りのレッスンであり、笑いながら生きていくための優れたレッスンでもあったのだ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぶんこ
45
夫に寄り添い、自分の願望を抑えてきた母が、死を間際にして洗礼を受け、自ら教会のホスピスでの最期を選ぶ。ところどころ横暴とも思えるお父さんに悲しくなりましたが、自分をおいて先立つ妻の身近にいるのは辛い。特に苦しんでいるのを見てはいられないでしょう。娘さんが2人もいてお母さんは良い人生だったでしょう。朦朧とするなかで、オーロラを見たり世界各地へ「時間旅行」をした場面が何度か出てきました。天国に行く前に好きな所へ移動の苦労もなく行かれるのなら、最期も怖くないかな。2019/04/02
Chiyo
7
長崎のホスピスにて、シスター・ヒロ子から末期がんの母や著者へと贈られる、ユーモアと慈愛に満ちた言葉をエピソードを交えて紹介する。 私は以前、数年間お看取りの現場に携わっていた。その時にずっと考えて実行していた事が「お看取りは究極のホスピタリティ」という事だった。約束していた明日が来なくて、してあげられなかった事もたくさんあった。それでもまた誰かの為に、スタッフは陰で心で泣きながら笑うのだ。死を前に圧倒されるご家族に対し、出来ることはあるのだという事を伝えるのも私達の役目。シスターの慈愛の姿、見習いたい。2018/11/10
コロ
6
数ヵ月前に私自身も、家族と緩和ケアで母を看取りました。人が死ぬ時、見送るられる側、見送る側それぞれに想いや葛藤があります。一見辛さや苦しさで満ちたその時間が、ユーモアと祈り、そしてありのままを受け入れる姿勢を通じて温かくかけがえのない時間に変わっていく様子が著者の体験を通じて描かれており、母を看取る時の自分、家族、そして旅立つ母の姿を重ねながら読み温かい気持ちになりました。「死は祝福である。その贈り物をしっかりと受け取って」というシスターの言葉を改めて胸に刻みこむことができました。2019/05/11
okatake
5
舞台は、長崎市にある聖フランシスコ病院。 ライターである著者が母の死に際してこの病院のホスピス病棟にたどり着く。 そこで出会ったのがシスター・ヒロ子こと石岡ヒロ子さんです。 彼女のお母さんは、この病棟では2週間ほどしか生活できずに亡くなられたそうですが、その濃密な2週間に看護部長である彼女から得た関わり方や声かけをレッスンという形にして纏められた書です。 妹や父との関係性に悩み、母との最後の日々を過ごした日々がありありと目が浮かぶようです。 ひとが逝くときの医療者の関わり方の大切さを学びました。2019/01/20
のび太
2
自分が病気で残された命だと知ったらこのシスターにお任せしたいと思います。2020/02/24
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