内容説明
車椅子ホストのシゲノブが主人公。大学卒業後、就職が決まらぬまま上京し、ひょんなことからホストになった。客から障害者は席に来るなと言われたり、テレビに取材されたり、「障害者」というレッテルに振り回されながら、ホスト稼業に精を出していた。シゲノブは、歌舞伎町はレッテルをはられた人間の坩堝だと気づいていく。ホスト、風俗嬢、LGBT……。そんな人たちとの交流や恋愛を通じて、シゲノブが変わっていく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はじめさん
30
脳性まひで車椅子の青年が「おめーにゃ無理だ」と言われ、売り言葉に買い言葉でホストクラブに入店。新入りはトイレ掃除から開始だが、両手が塞がってできない。おめーは口だけか、あ゛? とすごむオラオラ系の先輩の言葉に唇を噛んだりするが、同僚や愚痴を聞いてくれるゲイバーのお姉さん、互いに憎からず思っている女子大生などとの交流、メディアに取り上げられる事で指名も増える。快進撃に見えたが…。/ 小説としては視点の入れ替わりが激しくちょっと…だけど、この作者だからこそ障害者や水商売に変なレッテル貼ってないかい? と問える2018/11/18
panashe
24
〈図書館電子図書〉【あんた車椅子でしょ。ホストなんてできるわけないじゃないですか】の言葉に、ホストになった阿部シゲノブこと河合進平。健常者、障害者って何だろう?外見だけではなくて内面も。今更ながら考えてしまった。乙武さんだからこその障害者の目線と障害者ヤクザという意味。小さな発見が散りばめられた本だ。音声読み上げ機能付2020/05/04
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17
【同じ目線なんて、ありえなかった】主人公が知らずのうちに、心の中に築いてしまった「そういう世界」。傷付かないように予防線を張る癖がついてしまうと、払拭するのはなかなか難しい▼リョーマの「クソみてぇなトークも、酒ぶちまけた粗相も、車椅子と全く関係ねぇじゃん」は、(言われてみれば当たり前だけれど)抜けがちか視点。"も"の前を自分の失敗に、"車椅子"をコンプレックスに置き換えてみると、背筋に電撃が走る。2018/12/10
ぴよ子
14
乙武さんだからこその説得力というかリアリティ。 車いすの男性を主役にした、前向きになれる話。 ホストクラブの経営者かつホストのリョーマさんがとてもよかったです。「車椅子だから」と卑下しているシゲノブに気づきを与えられる存在として描かれていました。私もこういう考え方になれたらいいなと思いました。 車椅子じゃなくても、差別はある。 今話題のLGBTだってそうだし、ほかにもいろいろ。 人は本当にそれぞれ。それぞれを認め合い生かしあい、素敵な社会になっていったらなと思います。2018/11/06
Yuko
13
元お笑い芸人、元車椅子ホスト、現在は「寺田家TV 車イス押して」のYouTuberとして全国を旅する寺田ユースケさんがモデルの小説。 障害者である主人公自身が「障害者だから」という考え方に囚われていたこと、更にはホストという職業に対して偏見をもっていたのはほかならぬ自分だったと気づいた場面が印象的だった。ホストクラブのNo.1がかっこよすぎ。 まずは「知ること」から始まる。いろんな人がいてあたりまえ、車いすもLGBTも“普通じゃん”という社会は遠くないと思えた。 2018/12/09