内容説明
明治35年、学習院在学中の著者は宮中に召し出された。4、5人の少年たちとともに、大人たちが出入り禁止の奥御殿で天皇に仕えるのである。10歳の少年が近くで見た明治天皇は、大声で厳しく、几帳面ながら、優しい思いやりを見せた。「大帝崩御」後は、昭憲皇太后、大正天皇、貞明皇后、秩父宮らに近侍し、半世紀を宮中に仕えることとなる。近代史研究者にたびたび引用されてきた重要史料の、初の文庫化。原武史氏が解説執筆。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
梅干を食べながら散歩をするのが好き「寝物語」
25
(再読)▼明治、大正両天皇と貞明皇后に侍従として支えた著者による体験談。▼同時期に出版された「女官」(山川三千子)、また原武史の「皇后考」「大正天皇」とセットで読むと、同時代の天皇家の様子がよく理解できる。▼明治天皇の豪放磊落な正確、権威主義とは真逆をいく大正天皇の悪童的な面白さ、貞明皇后の厳しさ…こういった、三者三様の性格がリアルに伝わってくる。▼原武史は静的な明治天皇と動的な明仁天皇(上皇)を対比しつつ、解説で「現在の皇室批判にもつながる証言」と評しているが、それは穿ち過ぎであり、共感できなかった。2021/09/28
ぼちぼちいこか
11
明治35年。著者は数え年10才で宮中に上がり、それから50年間天皇家に仕えた。10才の少年が何をするのか読み始めたが、表御殿と奥御殿の連絡取次役であった。今では考えられないが、このようにやんごとなき家の少年たちが天皇家にお仕えするのも興味がある。明治天皇、昭憲皇后、大正天皇、貞明皇后、昭和天皇ほか秩父宮など、著者が長年にわたり人間天皇を見てきた感想を書いている。特に貞明皇后の普段の生活が書かれていて、昭和の時代に生きた皇后の姿に感銘した。2019/07/24
かっくん
8
明治天皇、昭憲皇太后、大正天皇、貞明皇后に仕えた著者の宮中回想記。政治的な向きのない、著者が見た人間天皇の姿が写し出されている。この方たちも一人の人間としての生活があり、なにかというと皇室を政治的にあるいは歴史的に捉えすぎてしまう現在の皇室観に一石を投じているように感じる。ラストの解説は不要ではないか。2023/08/30
ヒヨドリスキ
7
明治から大正の宮中で体験した天皇、皇后の日常や人となりが分かる印象的な出来事が簡潔に書かれてる。質素倹約を重んじ、いわゆるカリスマだった明治天皇。闊達で活動的な大正天皇。天皇のいわゆるオフの部分ばかりなので人間らしさが伝わる貴重さの一方で、とにかく称賛の嵐なのと50年の割には語れる事が少なすぎて少し物足りない。作者は名家の子息で御側遣えをするのは平安の世からの倣いとはいえ、侍従に取り上げられたのだから優秀で控え目だったんでしょうね。2024/08/26
犬養三千代
6
明治天皇のことを書いた部分は、そうだったのか!と納得。しかし、貞明皇后はいただけない。そこまで、ヨイショするか!五歳児から無くなるまでの皇后の記述は???2020/08/10