内容説明
海を渡った宣教師と、命を賭した信徒たち。
殉教をめぐり400年の時を駆ける旅へ!
16世紀後半、織田信長の時代にローマに送られた天正遣欧使節の4人の少年たちは、帰国後、秀吉による伴天連追放令。キリシタンが迫害される世に何を思い、どう生きたのか。
また、日本で布教に携わって殉教した外国人の神父たちは、どんな思いで最期を迎えたのか――。
あらゆる資料・文献を丁寧に読み込み、自ら迫害にまつわる土地を旅して、当時のキリシタンの生き方に迫る。
長崎、島原城、日野江城、原城跡、大村、鈴田牢……さらには、殉教した外国人神父たちの故郷であるスペインの小さな村の教会まで。
果たして、日本人にとってキリシタンとは何だったのか――。
著者は4人の少年たちが8年にわたる訪欧の旅から戻った直後に、秀吉の前で奏でたリュートに強く興味をひかれ、東(日本)と西(ヨーロッパ)の狭間で翻弄された少年たちの気持ちに近づくために、自らリュートを習得した。
400年前、その時代を切実に生き抜いたキリシタンの息吹を新たな視点で現代に伝える野心作。
解説・若松英輔
「時空と距離を超えて、人々の心が結びつく瞬間が、著者の情熱によって到来する」(三浦しをん)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こばまり
64
確かに最近の関心の一つにキリシタンがあるが、信者でない私がよもや最終章で落涙するとは思わなかった。特にタイトルの意味するところに。心の赴くまま斯くも深い旅ができる著者の感性に改めて羨望の念を抱く。2020/06/26
kei-zu
26
著者のフィールドワークに圧倒される。資料を読み、現場を訪れ、人と言葉を交わして明らかになる史実。 キリシタンの資料はいくらか読んだことはあるが、殉死と聖遺物への執着は指摘されるまで気が付かなかった。それでも、当時を生きた人々に向ける著者の視線は暖かい。 エッセイ風に書かれる現在の著者の描写と資料の読み解きで描かれる当時の模様が交錯する構成に、慣れないうちは戸惑ったが、本書の最後でそれらが重なるカタルシスは圧巻。2021/04/29
梅干を食べながら散歩をするのが好き「寝物語」
24
▼力作。古楽器リュートと出会った著者は、リュートに触れていたであろう「キリシタン」に関心を向けた。長崎、そしてスペインにまでキリシタン史見聞の旅に出た。現地での見聞きを通して特に殉教者の心に深く思いを致している。▼ 殉教への同調圧力や「生き残り」に対する冷ややかな目があったのではないかと筆者は推測する。この読みは深いと感じた。 ▼多数の殉教者が出た長崎県大村が飛行機の窓から見えた瞬間に号泣したと著者はあとがきで語る。調査の深みを窺い知ることができる。▼長崎に行くクリスチャンは事前にこの本を読むべきだ。2023/04/26
hatayan
15
キリシタンにシンパシーを感じた著者が1600年代の楽器であるリュートを手に、殉教者のルーツを追って長崎、スペインを訪ねた記録。 壮絶な殉教を遂げたキリシタンは記録されないまま膨大に埋もれていること、キリスト教で福者、聖者と認定されるには教会本部の年単位の審査があり、不純な動機がないことが確かめられること、処刑された信者の遺体や遺物が崇敬の対象として奪い合う対象ですらあったこと。迫害されるキリシタンをテーマにした映画「沈黙」の映像を思い出しながら読みました。 著者の文体は人によって好みが分かれるかも。2018/11/17
雲をみるひと
13
戦国時代から江戸初期のバテレン、キリシタンの動向を追ったノンフィクション。ページ数が示すようにかなりの大作。この作品ではリュートにあたるが導入部から詳細で、現地取材記が多く、かつエモーショナルな作風は以前通り。作者の世界観に引き込まれそうな作品。2020/11/26
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