内容説明
哲学は難しい、哲学者は何を考えているのかわからない――。
一般人には、哲学も哲学者も雲の上の存在である。本書を読むと、哲学者は日々こんなことを考えているのかと知ることができるが、驚愕もしてしまう。そして同時に、多くのことを学ぶ。
この本は、カント哲学の学者であり、闘う哲学者として多くの著作を持つ著者の、講演やインタビューや対談をまとめたもの。
考えるための素材に満ちている。
哲学を志す原点となった、小学生のころの「明日死んでしまうかもしれない」という恐怖は「そんなに一生懸命生きても明日死んでしまったら何にもならない」というところへ向かう。
ウィーン留学で考えた「ヨーロッパ」「国際化」。哲学を学ぶことは「死」と「時間」と「言葉」と向かい合うことであり、「理不尽さ」を知ることであるともいい、真摯に哲学的に「生きる」ことのたいへんさを語る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
SOHSA
34
《購入本》著者の根源的な問い、それがそのままタイトルとなっている。答えの出ない問いを出ないことと知りながら問い続けること、それこそが哲学をするということ。著者のこれまでの人生について自身が講演で語ったことを文章にしたのが本書であるが、読み手にとっては氏の肉声が聞こえてくるようで迫力がある。同じことを繰り返し述べることはだからこそ決意と本当の拘泥が伝わってくる。氏にとっての哲学することの意味が本書には詰まっている。中島義道という哲学者に興味のある人にはおすすめしたい一冊。2018/05/14
踊る猫
29
中島義道の文章を読むのは、例えば車谷長吉の文章にも似た味わいがある。基本的に苦労人で、努力が必ずしも報われるとは限らないことを知悉している。でも時流の流れに乗せられるがままに必死こいて生きていると、その内にあれよあれよと「今」に至った……そんな虚しさの永劫回帰を生き抜いて来た人間だけが持つ凄味というか、真似出来るようで出来ない風来坊の生き様を感じるのだ。だから中島義道は淡々としている。いや、執着はある。それはもっと生きていたいとか、そんな幼稚な次元のものだ。この態度、佐藤伸治に似ていると思うのは私だけか?2019/08/06
踊る猫
28
ずっとぼくは中島義道を(あるいは、あらゆる哲学書を)誤読していたのかなとも思えてきた。たとえばぼくは自分の親を「精神的に」殺さないといけないとは考えないし、他人に理不尽について問いただすことを哲学的だとも思わない。だから過去にぼくは「戦う哲学者・中島義道」になれない自分を恥じさえして、哲学をする資格はないとも思ったのだった。でも、違うだろう。ぼくは中島義道に対して、この自分の「身体」「主観」の主張に即して「なぜですか」と問わなければならない。そのようにして中島義道を「精神的に」斬ることが大事なのだろう、と2023/10/04
ただの晴れ女
5
著者の講演をまとめた一冊。妹と「国際『貢献』」ってことばを気軽に使っちゃう傲慢さ・無知さについて語っていたことと、「ほんとうの国際化」が結構かぶっていたなー。「理不尽に恵まれている」ということばの使い方も新鮮。「この世は理不尽である」ってひねくれているようだけど、自分はこんなに努力したんだからお前らも努力しろ、という想像力のない「正論」は、時に人を苦しめる。「人は似たとこもあるし違うところもある」哲学は「する」もんであって「学ぶ」ものじゃないんだよな。2012/12/11
Tom
4
講演等の文字起こしで、他の著書でも語っていたようなこと。口語なのでわかりやすい。発見は、理不尽に恵まれることもあるということ。著者は国立大学に十二年もいて、税金を食いつぶしている。さらにウィーンではアジア特待生ということで授業料無料。バイト先の予備校では落ちこぼれだったが、ウィーンで学位を取得し帰ってくると東大助手。同期はいまだに予備校で教師をやっていたという。人生って運だ。著者に少しでも社会適応性があったらどうなっていたか。予備校教師を続けていたのではないか。努力や才能なんて、運の前では全く無意味だ。2023/02/08
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