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内容説明
ひとり暮らしの女性の日常と東京の夜景を通して現代の時間の流れを切り取った表題作ほか、龍になろうと修行した男がウナギになって食われる「龍神抄」、赤塚不二夫の満州引き上げ体験を絵物語にした「赤塚藤雄の頃」、藤枝静男や梅崎春生の短編を漫画化した「妻の遺骨」「輪唱」など、新時代のリアリズムを切り拓く1+13編を収録。
音楽家・小西康陽が「ヌーヴェル・ヴァーグ」と評価し、「POPEYE」「SWITCH」「SPECTATOR」………各カルチャー誌がこぞって特集。第21回 文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品にも選ばれた話題の俊英・川勝徳重、待望の作品集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かっぱ
41
ガロ系劇画漫画と言っていいのだろうか。質素で地味に生きていても龍に転生したり、天国へ行って花に囲まれて生活したりすることにはならず、その姿は間抜けなうなぎであったり、ただの空飛ぶ目玉であったりする。後味が良くはないが悪いとも言えない不思議な読後感。「赤塚藤雄の頃」は漫画家・赤塚不二夫が少年時代を送った満州での生活と敗戦後の命懸けの帰国を描いた作品で印象的。作者が解題で雨が降りそうな曇りの日と、雪の日の東京は美しく、世界が明瞭になる、と綴っているものがあり、そんな世界を愛する人だからこその作品群だと思えた。2018/11/30
内島菫
24
（まず一番好きな作品は藤枝静男原作の「妻の遺骨」）本作品集に収められている海外の漫画のような三つの漫画には、コマの枠線がない。枠線があることに慣れている私には、コマとコマの間を走る白く細い空間がまるで道のように浮かび上がって見える。また、ひとコマの範囲がはっきりせず、特に白っぽいコマや、細かく変形気味に区切られたコマの連なりはちょっと読みにくい。これらの漫画を読んで思ったことは、コマを枠線で囲うということは空間を区切りリズムを与えることではないか、ということだ。2018/09/28
∃.狂茶党
18
東京出身であると、自身が述べており、古賀新一の、東京出身者が生き延びやすいって意味合いの言葉とともに、生まれた育った環境による、文化的土壌の豊かさの違いを感じないではいられない。 本書は、原作付きも含めて、私小説的といったらいいとおもう。 「劇画」今日オルタナティブコミックと呼ばれるような表現を、作者は突き詰めて考えている。 物語を紹介することは、あまり意味がないような気もする。 小説原作作品も含め、漫画でしか表せない、映像的な体験を、楽しむ本。 2023/08/09
Bo-he-mian
18
小西康陽氏は「ヌーヴェルヴァーグ」と称し、漫画読者は「ガロ的」と表現する。川勝徳重の名前を知ったのは同人誌『架空』で、その編集者だったから(この雑誌は西野空男氏から受け継いだというのを本書で知った)で、巻末に『電話・睡眠・音楽』の発売予告が載っていた。椅子に座ったまま気絶しているような女性の絵にぞくっとなって、久々に心に焼きついた思いがあった･･･何となく、ジブンと同世代の、サブカル系でコツコツ漫画をインディーズで描いている人じゃないかと思っていたら、26歳･･･若っ！！ オレの半分じゃねえか(笑)。2019/01/12
kuukazoo
10
4、5年前にジャケ買いしたがきっと思ってたのと違ったんだろう。放置してたわけではなくふと思い出してつまみ食いのようにちびちび読んでは積読にしていた。ガロ系の漫画は若い時はすごく読んだけど歳を取った今ではきびしいのだ...藤枝静男と梅崎春生の短篇や赤塚不二夫の戦後引揚げのエピソードや雨月物語の1篇を漫画化しており、オリジナルもまた珍味である。冒頭の『龍神抄』とかちょっとポカーンであった。表題作はなるほど映画のようだった。10頁を超える「著者解題」が親切。2022/06/05
