内容説明
一人の青年の出現で揺らぎはじめる夫婦の日常――。「老いゆく者」の心境に迫る、著者の新境地! 趣味のクロスバイクを楽しみながら、定年後の穏やかな日々を過ごす昌平とゆり子。ある日、昌平が交通事故で骨折し、「家事手伝い」の青年・一樹が通うようになる。息子のように頼もしく思っていたが、ゆり子は、家の中の異変に気づく……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
294
井上荒野は、新作中心に読んでいる作家です。高齢化が進んでいる日本の社会で実際に起こっていて、今後も増加しそうなリアルな小説でした。新聞小説なので、深刻な結末ではなく、爽やかなエンディングでしたが・・・少し『太陽がいっぱい』を想い出しました。2018/05/27
風眠
214
ある日突然に実感してしまうもの、それが老いというものなのかもしれない。もう自分は高齢者と周囲から認識される年齢になってしまったというショック、いやでもまだ違うという言い訳。もう取り戻せないさまざまなもの、止められない時の流れ。そしてふと気づいてしまう寂しさ。そんな寂しさの刹那、優しくされたら、その人を頼もしく思ってしまうだろうし、騙されていると薄々気づいていても、それを認めたくない感情が生まれるだろう。『その話は今日はやめておきましょう』読後、このタイトルがじわりと効いてくる。現実を受け容れる事の難しさ。2018/10/18
machi☺︎︎゛
154
タイトルと装丁が前から気になっていた1冊。内容が想像もつかないまま1ページと読み始め、結果一気読みだった。クロスバイクを趣味として仲良く暮らす1組の老夫婦。その旦那が骨折をしてしまい人手が必要となり家政婦を雇うことに。その家政婦が26歳の青年で、始めは何の問題もなかったが段々と色々なことが上手くいかなくなってしまう。老夫婦の仲まであやしくなる。ホントはいい青年なのかもしれないけど、私は最後まで好きになれなかった。2020/05/22
ナイスネイチャ
152
図書館本。お人好し金持ち老夫婦がけがをきっかけに偶然出会った若者一樹にお使いなど便利屋を頼みすんなり家にいれてしまう。最後は良かったけど、一樹は結局何も感情移入出来なかった。2018/08/04
taiko
119
ロードバイクでのサイクリングが趣味の定年後夫婦ゆり子と昌平。昌平が事故で足首を骨折したことをきっかけに、以前知り合っていた青年一樹を家政夫として雇うことにした。…ザワザワと嫌な気持ちになるお話。それでも先が気になりやめられませんでした。ゆり子と昌平夫妻がお人好しとも言い切れず、近所との付き合いも疎遠だったがために一樹に頼ってしまった所があったのだろうと思うと、寂しさを感じます。一樹も、暴力的な衝動を持っているとはいえ、根っからの悪人ではなかったのではないかと思わされ、それは私もお人好しなのかなと→続く2018/10/08