内容説明
歴史家・網野善彦と哲学者・鶴見俊輔が、それぞれの半生を重ねながら日本の歴史を問い直す。われわれはいつから「日本人」なのか。教科書と違う視点に立ったとき、新たな「日本」の姿が見えてくる。異端な2人の、たった一度の対談を文庫化。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
saga
36
軍国主義の日本が太平洋戦争へ突き進む時代に生まれ育った2人の対談。網野氏は『日本の歴史をよみなおす』を読んで、その歴史観に感じ入った人。マルクスに関することや、天皇制に関する対談を読むと、左寄りの人なのかと思ったが、最後まで読めば、素直に日本の歴史、それも通史を考えている人であることが理解できる。ただ、自分には対談を読み理解するのが苦手なんだと痛感した。2020/01/28
おたま
33
歴史家・網野善彦と哲学者・鶴見俊輔との対談。網野善彦独自の日本の歴史の捉え方に対して、鶴見俊輔がその該博な知識と柔軟なモノの見方から様々な質問・意見を発している。二人に共通しているのは、そもそも「日本」「日本人」とは何かということ、そして「天皇制」をいかに捉えるのかということ、この辺りだろう。これらの問題は網野さんがこれまで様々な著書で述べてきたことの概観ともなっている。対談なので、言葉遣いも易しく、よく分かる。網野さんの歴史書への入門としてもよい。2022/01/24
ステビア
25
噛み合わなさそうで微妙に噛み合ってるのが面白い。相対化。2021/01/01
俊介
10
この2人の対談なら面白くないわけがない、と思い。小難しい話もなく、量も200ページにも満たないので、軽く読むことが出来るが、その分こちらが期待していたようなディープな領域まで踏み込むに到らなかった印象。それでも、お二人の歴史観、天皇観、個人的体験などの貴重な証言は収穫だった。なかでも網野さんが感じていた、それまでの歴史学への違和感、窮屈感は、痛々しいほどに伝わってきた。でもきっとその窮屈感が、大きな仕事を成し遂げようしようとする時のバネになってったんですね。2019/12/22
ポカホンタス
7
薄い対談本なので新幹線で読もうと思って持ち出した。内容は濃いものだった。百姓を農民と限定してしまったことで多元的な視点が失われたという話や、人間から離れた概念でしかない「日本人」という話など、Ⅰ部の「歴史を多元的にみる」が興味深かった。2019/01/14