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内容説明
古事記は、律令国家の由緒を描く史書として読まれてきた。だが、こうした理解には根本的な誤りがある──。日本書紀には存在しない「出雲神話」が必要とされたのはなぜか。どうして権力にあらがい滅びた者たちに共感を寄せるのか。この作品の成り立ちを説く「序」は真実か……このような疑問を通じ本書は、「国家の歴史」以前から列島に底流する古層の語りとして、古事記をとらえ返す。それにより神話や伝承の生きた姿、魅力がよみがえる。古事記の世界を一望に収める入門書の決定版。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
南北
49
古事記の序文は後世の偽作であるという視点で古事記を読み直している本です。古事記の元になったのは「語り」であるという説には納得できました。個人的には「語り」は定期的に披露されたと考えているので、先代の天皇の事績が追加される以外は同じ話を繰り返してきたはずです。伝承される途中で追加や削除をしたとする造作説はこの点から見ても成り立たないのではないかと思います。2020/07/03
おせきはん
29
史書ではなく「国家の歴史」以前から列島に底流する古層の語りとして『古事記』をとらえ返しています。私にとっては登場する神・人物の名前になじみのないものが多く、『聖書』よりも難解だったものの、物語としての面白さの一端は理解できました。『古事記』そのものにも挑戦します。2020/09/27
やいっち
26
これまでいろんな古事記関連本を読んできたが、本書が一番、読みやすいし面白い。辛酉革命と明治維新との関係など、再認識。初学者にもお勧めの本。明治維新以降、あるいは江戸時代の終わりごろからか、記紀神話と呼びならわす慣行があった。国の意向でもあったのか。しかし、日本書記と古事記とは書かれた内容や表現も、その意図(目的)もまるで違う。2017/03/19
かふ
25
上巻だけではなく、天皇の世代を語った中巻、下巻、も語られているので入門書にもいい。最初は神話的な荒ぶる英雄伝(ヤマトタケルノミコトはスサノオのリメイク?)から仏教・儒教的な思想が入ってくる物語への変化し、荒ぶる神から人間天皇へと形成されていく。「海彦・山彦」に第三の兄弟がいたのが驚きだった。これも「月読」タイプ。『古事記』は語り直した天皇の説話も多く、『日本書紀』のような律令国家を語っるだけの天皇像(それは後にクーデターを起こした神天武天皇が都合のいいような皇国史観を形成していく)ではないのだ。2020/08/09
道楽モン
20
池澤夏樹版『古事記』にも熱い解説を寄稿された先生の、熱い新書も読んでみた。これがまた凄く刺激的で、門外漢には超どーでもいい事を、熱く執拗に語っており、心から感動してしまった。学問って、こーでなきゃーね。国文学専攻の方たちは、こういう事を研究していたんだなーと、理科系の私は面食らっちゃいました。本当、凄いなー、熱いなーと読む手が止まりませんでしたよ。将来、歴史的な発見がなされた場合、最悪自分の学説が、まったくの的外れであったという可能性もある中、リスク度外視で自説を熱く語る。カッコいい!(いやマジで)。2023/06/12