内容説明
本書は、1925年(大正15年)に全米でベストセラーとなった旧長岡藩筆頭家老の娘・杉本鉞子による自伝的小説の完全新訳版。明治6年に生まれた著者・杉本鉞子は、伝統的な武家の娘としての教育を受けた後、貿易商を営む日本人男性と結婚して渡米、習慣や人々の気質の違いに戸惑いながらも米国の地で娘にも恵まれ幸せな家庭生活を送っていた。しかし、38歳の若さで夫が急逝。いったんは帰国するが、再度2人の娘を連れて米国で生きることを決意。生活のためにはじめた雑誌「アジア」への連載が1冊にまとまったものが「A DAUGHTER OF THE SAMURAI」であった。原書は全米でグレイトギャツビーと並ぶベストセラーとなり、日本を含む8カ国語に翻訳される。本書はこれまでの翻訳版では削除されていた24章を含む初の完全版である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みやび
21
職場の人から借りた本。旧長岡藩筆頭家老の家に生まれ、厳格な武家の娘として躾けられた著者が、結婚のため日本とは文化も伝統も全てが違うアメリカで生活する事になる。そこでの暮らしは戸惑う事ばかりで、相当に大変だったはずなのだけど、相手を尊重し受け入れ理解しようと努力し、それでいながら日本女性としての品格を損なう事なく、前向きにその瞬間を楽しまれている姿がとても美しく素敵だった。今はもうない明治の風景や当時に生きた人達を知る事が出来たのも嬉しい。雛祭りの起源が神道の誕生まで遡ると言う話がなんだか印象的だった。2019/09/08
なにょう
15
武士の娘の一代記。長岡藩の最後の筆頭家老の末娘。縁あり米国へ嫁ぐ。米国へ嫁ぐため一旦、上京すると。ミッションスクールでは今までとは百八十度違う世界が待っていた。田舎のお姫様が客観的な視座を得る。★鉞子さんが今の我われを見たら腰を抜かすこと間違いない。ついに日本とアフリカの血を受け継ぐNBA選手まで現れた。いや、ほら御覧なさい、東も西も人の心は変わらない、と鉞子さんはおっしゃるだろうか。2019/06/22
マッピー
13
幕末の長岡藩と言えば河合継之助が有名だけれど、筆頭家老の稲垣家に生まれたお嬢さまが著者、杉本鉞(えつ)子だ。 最も彼女が生まれたのは維新の後だけれど。武士の娘として日本の文化を徹底的に躾られてきた彼女は、アメリカの文化に触れ、その違いに驚きつつも柔軟に受け入れる。劇的な人生を送った人ですが、それを感じさせないくらい人生を楽しんでいるのが素晴らしい。アメリカの人たちに日本人とその暮らしを紹介した文章ですが、今となっては純粋日本人の私も知らないような日本古来の風習やその意味を教えてくれるのが大変ありがたい。2019/06/28
セレーナ
11
旧長岡藩主家老の娘がアメリカに嫁いで、英語で記した本。実話と創作が入り混じっているが、分かりやすく日本の風習を述べており、今更知ったことも多い。白無垢の花嫁衣装が生家からすると、娘が死んだことになるからとか、なるほどと思った。様々な昔話も大変興味深く面白かった。一方で当時の日本では女性は意見は言わず一歩下がることが求められ、アメリカの女性は自分の意見があるみたいな記述があった。今の日本でも女性は意見を言わず一歩下がることが求められてると感じるので、まだまだ歩みはとめれないなと思う。2022/07/18
ジャズクラ本
10
◎著者は長岡藩家老の娘。米国滞在日本人男性と結婚のために渡米。彼の地でA Daughter of the SAMURAI(原題)を出版。ベストセラーとなり8ヵ国語に翻訳される。後に司馬が名翻訳と賛した大岩美代の翻訳で日本で出版され、本書はその新訳。八丈島の習俗、鬼子母神、雛祭りやお歯黒の起源など日本文化の紹介が改めて深い知識を与えてくれるし、日本人から見た当時の米国という観点でも楽しめる。何より著者と異国の人達が心を通わせようとするやりとりや姿に心打たれます。文章も気品あり、やはり紛れもない名著でした。2020/03/02