角川文庫<br> 颶風の王

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角川文庫
颶風の王

  • 著者名:河崎秋子【著者】
  • 価格 ¥616(本体¥560)
  • KADOKAWA(2018/08発売)
  • ポイント 5pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784041072202

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内容説明

明治期、東北。許されぬ仲の妊婦ミネと吉治。吉治は殺されミネは逃げる途中、牡馬アオと雪洞に閉じ込められる。正気を失ったミネは、アオを食べ命をつなぎ、春、臨月のミネは奇跡的に救出された。
 生まれた捨造は出生の秘密を知らぬまま、座敷牢で常軌を逸しているミネを見舞い暮らす。アオの孫にあたる馬と北海道に渡ることを決心した捨造は、一瞬正気になった母から一切の経緯が書かれた手紙を渡され、今生の別れをする。
 昭和、戦後。根室で半農半漁で暮らす捨造家族。捨造は孫の和子に、アオの血を引く馬ワカの飼育をまかす。ある台風の日、無人島に昆布漁に駆り出されたワカとほかの馬たちは島に取り残される。捨造と和子はなすすべもない。
 平成。和子の孫ひかりは、和子に島の馬の話を聞かされていた。ひかりは病床の和子のために島にいる馬を解放することを思い立ち、大学の馬研究会の力を借りて、野生馬として生き残った最後の一頭と対峙するが……。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

しんごろ

200
第一章が、ちょっと個人的にグロいというか描写がきつかったけど、それを超えたら一気読み。でも第一章が悪いわけではない。もちろん良かった。厳しい自然、広大な大地、強く激しい風、何かを包み込むような波、極限の寒さ、そんな景色が目に浮かぶ。馬と馬によって生かされた6世代にわたる馬屋だったヒトとの濃厚で壮大な物語。馬もヒトも“及ばぬもの”との戦いであったのではないか。花島で生き残った一頭の馬、馬屋の末裔の娘、その邂逅は気高く気品を感じて美しく思えた。それは王と呼んで間違いない。 2021/11/27

しいたけ

126
『70時間全文試し読みフェア』にて。3つの時代の、人と馬の必死な生。共通するのは強風に立つ、生きとし生きるものの凛とした姿。人の「オヨバヌトコロ」への畏怖。代が変わると、文が纏う色もガラッと変わる。ひとつめは白、ふたつめは濃緑、みっつめは碧に包まれて読んだ。それぞれに心を掻き立てる風が吹く。素晴らしかった。手元に置かねばなるまい。2018/12/02

ふじさん

112
河﨑秋子の長編デビュー作。お腹に子どもを宿したまま駆け落ちしたミネは、単身馬のアオで逃亡し、雪崩に合いながらも馬を食らって生き延び、無事の捨造を生む。この経緯は、まさに壮絶なドラマだ。根室に住み着いた捨造とその家族は、馬と共に生きる選ぶが、台風で馬を育てる生活を諦めることになる。救うことが出来なかった馬に心を残し続ける祖母の気持ちを知り、孫のひかりは、残された一頭の馬に合うために、花島を訪れる。そこで逞しく生きる馬の姿を見て、祖母の馬に対する強い思いに改めて気づく。世代を超えた馬とひとの交流を描いた力作。2022/11/03

のぶ

103
北海道の広大さと、土の匂いが伝わって来る作品だった。東北と北海道を舞台に、馬と関わる数奇な運命を持つ家族の、明治から平成まで6世代の歩みを描いた物語。全体を通しての主人公は馬なのだが、寄り添う人間のドラマとして楽しむ事ができた。特に前半部の、許されぬ男性との子供を身籠った妊婦ミネが雪崩に巻き込まれ、一緒にいた馬のアオを食べ、命をつなぎ、春に臨月のミネが救出されたシーンは圧巻。著者の川﨑さんは北海道在住で、羊飼いをしながら執筆活動をしているようだが、そんな環境で住んでいる人にしか書けない本だと思った。2019/12/21

タイ子

90
いい本を読んだなぁ。颶風=強く激しい風。馬と人、家族の絆が120余年に渡り連綿と綴られる壮大な物語。著者の作品は初読みですが、表現力が上手くて読みながらドラマを見ているような感じ。それゆえミネの雪山遭難の場面はリアル感満載。命を守ることは命を頂くこと、そして次の世代に引き継ぎ、また次の世代が命をつなぐ。最終章で6世代目のひかりが祖母のために島に渡り野生馬の様子を見て「私のどこが哀しいのだ」と馬に言われた気がするシーンは泣けましたね。厳しい環境の中に生きてこそ人も馬も強くなれる。読み友さん、ありがとう!2019/06/30

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