内容説明
アメリカの人種法と市民権法がニュルンベルク法を生み出した。合衆国がジェノサイド政策に与えた影響を、丹念に掘り起した画期的業績。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
塩崎ツトム
13
ナチ政権の初期ユダヤ迫害政策に、アメリカの人種隔離政策がかなり参考にされていたことを示す。アメリカの司法体制もかなりキメラ的なものだが、ナチはそれをさらに醜い怪物じみた制度にしようとしていた。2023/09/17
田中峰和
8
トランプの移民排斥は市民社会にも伝搬し、各国でも極右が台頭する兆候はナチスより、米国の20世紀初頭にもみられる。まさに先祖返り、本書はそんな事例を数多くの資料から例証する。数百万人をガス室に送ったナチスの悪事は、数約万人のインディアンを銃で撃ち殺して数十万人まで減らした歴史をなぞっているだけ。黒人などの有色人種との結婚を禁じ、読み書きテストをクリアできない者に投票権を与えない法律は、中国やアジアからの移民を制限した。ナチスのニュルンベルク法は合衆国の事例を取り入れ、ユダヤ人の特定と虐殺にまで繋がった。2018/11/28
Toska
6
人種主義のチャンピオンであり白人による征服のシンボルだったアメリカに対し、ナチスが寄せた熱い視線。『我が闘争』でアメリカが好意的に評されていたというのは初めて知った。ナチズムとは決して突然変異的な存在ではなく、近代ヨーロッパの思想潮流(の一つ)にルーツを持つものであったのだ。さらに、アメリカの「リアリズム」法学がナチ法曹界の大物たちを惹きつけたという興味深い指摘もあり、頁数は少ないが様々な鋭い論点を含んだ良書。2021/12/01
フクロウ
4
ナチスはニュルンベルク法制定にあたり、アメリカの諸州の①移民法制②二等市民法制③異人種間結婚規制(刑罰あり)をかなり研究していた。また参考にされたのは制度形式だけではない。ナチスは悪しき法実証主義の典型といわれてきたが、それは国家対国民関係だけであり、総統対官僚関係では、官僚にヒトラーの精神を忖度しての権力行使という自主性が認められ極めて広い裁量が与えられていた。概念法学で縛られたナチスの法律家からすればアメリカリアリズムこそはヒトラー精神の実現のための自由裁量を正当化してくれるロジックだっのである。2018/12/19
takao
3
アメリカの人種法に強い関心を抱いていた。2022/04/10