内容説明
日本語は、曖昧で情緒的な言語とみられてきた。一方でデカルトに代表される西洋哲学は、言語をロゴスとして捉え、人間を理性的存在とみなして、情緒的なあり方をパッションに閉じ込めてきた。それゆえ人間の身体性やいまここに立ち現れている現実が歪められてきたのも事実である。本書は、日本語の「曖昧さや情緒」を文法構造に分け入って分析することで、これまで普遍的とされてきた思考とは異なる世界理解を切り拓く日本語による哲学の試みである。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
テツ
25
身につけた言葉が私を形成していく。発する言葉がまた私を形成していく。誤解を恐れずに言ってしまうのなら、使用する言語が異なればその集団に流れるふんわりとした大きな雰囲気も異なってしまうのだろう。長い間醸し出されてきた違う空気が漂う中で生きてきたのだから。そうした前提で、西洋哲学の中で生じたズレが、日本語が日本語であるが故に日本語で思考されていくうちに直されていったのは、本邦の言語の如何なる特徴によるものなのかということについて。3%も理解していないと思いますが本当に面白かった。早めに再読したいです。2019/07/16
かふ
23
西欧哲学(論理学)批判であるのだが、ユダヤ・キリスト教が哲学の元にあり一神教的問いかけが自己と神になるので堂々巡りしていく。日本語は他者との関係性で成り立っているから哲学的には適した言語だと哲学(論理)しているのは膠着矛盾しているようであまり良く分からなかった。論理だけでなく感情(こころ)も大切だと構造主義的なことなんだと思うがあまり日本語ばかり褒めてもなとも思うのだった。外部の影響があって発展してきたのだから。哲学ならなおさら。論理が複雑に錯綜しているような感じを受けた。ベルグソンとか褒めているのだし。2024/04/04
良さん
7
今年いちばん私のアンテナにヒットした本。日本語の本質を理解することで、人間存在や世界の把握のしかたについて考察を深めることができる。何回も精読したくなる本。 【心に残った言葉】人間存在をどこまでも関係論的にとらえる(74頁)/言葉とは…「言霊」なのです…人と人との交流の姿そのものなのです。(118頁)2018/10/31
Guro326
5
★★★▲☆ やっと読めた。半分も理解が届いてないとは思いつつ。おそらく小浜氏の最もいいたいことは受け取った気がする(永年の読者である驕りを含んで)。中盤の日本語文法に関する近年類をみない画期的な分析は、たぶん本旨ではなくて、日本語をとらえなおすためのメソッドと読むのがよいだろう。ことば、が、私を私たらしめる。今年の一冊に推すし、もっと読まれてよいと思う。2018/12/14
Kyohei Matsumoto
4
西洋哲学の中心となっていた論点の穴を、日本の哲学が埋めることができたその理由を日本語の構造、つまり文法に着目して具体的に述べている。日本語には絶対的な“神”という視点がなく、常に周囲との関係性に焦点を当てた構造となっており、描かれる世界像は「次々となりゆくいきほひ」である。動的なものを備えている以上、静的な存在論を考え尽くして、西洋には存在論を語るための文法がないと結論づけたハイデガーをまさに軽々と超える文法が存在している。日本語の身体に根ざした情緒性は西洋とは違った視点で思想界に影響を与える。2019/02/05
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