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内容説明
時代の底辺で変革期を生き抜いた人びとの挫折と夢の物語から、現代を逆照射する日本の転換点を描き出す。『逝きし世の面影』の著者による、明治150年の今年必読の評論集。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
100
渡辺さんの「逝きし世の面影」は既読ですが、少しほかの本もということで手に取りました。さまざまなところで発表されたものをまとめたもので、ある題材をもとにその文献についての詳しい論考がなされています。私はとくに「山田風太郎の「明治」」と「「旅順の城は落ちずともー「坂の上の雲」と日露戦争」が印象に残りました。前者はとくに山田の明治小説集を取り上げていて、山田がかなり資料を読み込んでいることを評価しています。後者は逆に辛口の評価ですが、良いところもあると言っています。山田の作品を読みたい気にさせてくれました。2023/08/07
Sam
57
そういえば「逝きし世の面影」も読みかけのままだったなあと思いながら本書をパラパラとめくったら山田風太郎の明治シリーズについて書いてあったので購入。その面白さや素晴らしさを詳しく論評していて何度も頷かされたし、個々の作品もさることながら「倫理も心情も踏みにじる歴史の進歩に対して一矢報いずにはいられないというのが彼の作家としての基本的立場」、「いわゆる真善美の世界を転倒する邪悪な眼で貫かれているにもかかわらず、崇高な真善美への憧れが常に伴っている」という評価もまさにその通りと思った。未読の作品を読まないとな。2023/01/09
tonpie
41
渡辺京二初読みなのだが、この人の「歴史観」に感服してしまった。「歴史」もフィクションである。というか、歴史こそフィクションなのだが、そのリアリティを保証するものは何か?「その時代の雰囲気がどうであったかというのは、その時代に生きていた人々の課題が何であったかということですね。それを具体的に明らかにできなければ、歴史など書けない」p208引用。 この本は、明治の「士族反乱」「民権運動」の精神について、山田風太郎、司馬遼太郎を論評するなかで明らかにしてゆく。↓2025/01/25
紙狸
11
文庫は2018年刊。最初は「書評なのか」とあてがはずれた思いがしたが、読み進めると面白くなった。坂口安吾、長谷川伸、山田風太郎らの作品を題材に、歴史の語り方を論じる。「敗者の歴史に注目したからといって、私たちはその社会変動の全体を叙述したことになるのだろうか」。この問いかけに深くうなずく。敗者に寄り添い、敗者の視点から歴史の変動を描くーというアプローチは近年、当然視されるが、そうすれば良い作品や研究ができるというものでもあるまい。筆者は、勝者でも敗者でもない膨大な生をイメージすることを提唱する。2019/11/29
勝浩1958
10
渡辺氏が描く歴史は社会科学ではなくて、批評性をもった文学にも通じる物語的な歴史であるから読んでいて楽しい。その時代の状況が眼の前に拡がってくるような感じが心地よい。2022/01/22