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内容説明
介護をはじめとした人材の著しい不足と劣化、大学の社会福祉学科への志願者の減少、目まぐるしく変わる制度、福祉思想の喪失。障害者差別解消法実施のように歓迎すべき話もあるが、全体として見れば福祉はすっかり壊れたといってよい。このままでは介護難民が溢れるのは確実である。しかしその危機感は、福祉関係者にも、行政にも、一般の人々にも見られない。まずは日本の現状を知り、危機意識を持つことが大きな一歩となる。福祉に携わって30年、介護施設での勤務経験も持つ大学教授が徹底解説。誰にとっても無関係ではいられない、必読の一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆう。
38
とても辛口な内容だが、研究者として真摯に研究している方だからこそ言える厳しい発言なのだと理解しました。確かに「福祉が壊れる」実態は幅広く存在します。僕も危機意識を持っています。福祉系の大学に学生は集まらず、国家資格の社会的認知も低く、労働条件は厳しい。また慈善的で恩恵的な福祉観が存在し、権利・人権としての福祉は政府・財界だけではなく市民のなかにも根付いているとはいえない。だからこその著者の問題意識なのだと思います。ではどうすればいいのか。それを考えるのが残された課題だと思いました。2018/07/26
てくてく
5
研究会でご一緒することもある方からの贈呈本。ストイックな研究姿勢に接するたびに自分のダメさ加減を痛感する。これまでの発掘した資料に基づく淡々とした論文や書籍とは異なり、自身の大学進学、福祉関係施設勤務、大学での経験から感じた社会福祉に関する問題を指摘しながらもなお福祉の理念への希望を掲げている。場面吃音の学生を指導していることから、著者の吃音に関する叙述部分が特に印象に残った。2018/07/04
Hidekazu Asai
2
著者自身、吃音者であり、福祉に30年携わってきた福祉への憤りの書物。 第五章吃音者への排除が高まっていく、は当事者ならではの熱い怒りに満ちている。 この本は面白い。2018/09/02
mochita
2
長く社会福祉学研究に従事してきた筆者が、真摯に、そして実直に「福祉の危機」を叫んでいる。平易な言い回しで読みやすいからこそ、文面から筆者の素直な思いが投げかけられてくる。「福祉が壊れる」ことを前提にしているので多少愚痴っぽくなっているところもある。しかし、見識がある者は筆者の指摘に思い当たる節を感じずにはいられないだろう。むしろ、見て見ぬふりをしてきた事柄を突きつけてくるだけに、学者や専門職には辛い内容である。が、本書を手に取った以上、もう逃げることは許されない。2018/06/19
うたまる
1
「介護保険は(中略)”保険”という仕組みの中での、限られたサービスの提供をするにすぎない。魔法の杖でも何でもない事実を、ありのままに認めるべきである」……理想に近づくどころか遠ざかる一方の福祉について、「もう我慢できない」と痛烈に批判した警告の書。怒りのままに書きなぐったのか、「腹が立つ」「害悪だ」「追放せよ」と凄まじい罵倒の言葉が並ぶ。それが然程不快に感じないのは、外部だけでなく内部にもきちんと刃を向けているから。特に第4章には感服。確かに福祉関係のNPO、専門家、研究者の独善的正義感は異様極まりない。2024/03/14




