内容説明
ニコロ・パガニーニ。全身黒ずくめの姿で繰り出す超絶技巧で人々を熱狂させた、空前絶後のヴァイオリニストである。「悪魔ブーム」をブランディングに用い、巨万の富を築いた守銭奴にして女好き。「無神論者」の烙印を押され、遺体となっても欧州をさまよった彼には、「幽霊となっても音楽を奏でている」との伝説も生まれた。十九世紀に鮮やかな刻印を残した「西洋音楽史のメフィストフェレス」、本邦初の伝記。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
旅するランナー
248
ニコロ·パガニーニ(1782-1840)。超絶技巧でヨーロッパ中を熱狂させた空前絶後のヴァイオリニスト。悪魔ブームを売りにして巨万の富を築いた守銭奴にして女好き。病魔に苦しみ誹謗中傷も受け続けたが、息子アキーレを愛しながら死にゆく優しき父親。その光と影を様々なエピソードを交え描く痛快無比なパガニーニ伝。さらに、イタリアの都市国家、ナポレオン一族との奇縁、音楽·絵画·文学など芸術への影響など、当時の欧州の状況を学べる。現在ジェノバ市庁舎に保管されるグァルネリ作でパガニーニの愛器カノーネ(カノン砲)を見たい。2022/11/19
コットン
93
旅するランナーさんのおすすめ本。悪魔的とも言える超絶技巧&極端なその人間性とヨーロッパ中を席巻した音楽性を凝縮した形の読み物になっていて興味深い。2022/11/24
キムチ
57
近世が一番面白いと思っている私。音楽においてもこの時代はパフォーマーとしての演奏が職業として財産を作って行ける時代に突入し、それの先駆けがパガニーニという。18Cは今を時めくそうそうたる作曲家が台頭、彼らとの交流エピソードはさながら何かのスクリーンで見た既視感。パガニーニって「何もの❓」と問われれば具体的には表層的な事しか知らなかっただけに解りやすい解説は読み易かった。終章で語られるパガニーニ・クァルテット―ヴァイオリンとその同属楽器による究極的なそれ。ストラディヴァリは既知乍らグァルネリはお初。2021/07/31
trazom
42
パガニーニの音楽は聴いても、伝説的なエピソード以外にこの人物についてほとんど知らなかっただけに、とても興味深く読んだ。パガニーニの資質を、超人的な「耳」と、柔軟な「肉体」というのは分かる気がする。パガニーニの「悪魔」には、ヴァイオリンの超絶技巧だけでなく、死人のように青白い顔、黒い衣装に身を包んで、人と交わらない傍若無人な態度など、様々な要素が絡み合っている。同時代の音楽家のパガニーニ評も面白い。パガニーニの対極のようなシューベルトが「ぼくはアダージョで天使が歌うのを聴いた」と言っているのには驚いた。2019/05/03
Isamash
35
浦久俊彦(1961年生まれの文筆家・文化芸術プロデューサー)2018年発行書籍。デイヴィッド・ギャレット主演のパガニーニの映画(2014年)を見ていらい、彼には関心大で本書を手に取る。系統だって彼の生涯を知ることが出来てありがたかった。本書により、まあリストは有名だが、それ以外でも同時代の一流音楽家に強い影響を与えたことを強く印象つけられた。ツェルニー、シューベルト、ショパン,シューマン、ロッシーニ等。映画の様に若い女性達の熱狂だけではなかったのだ。演出的部分意外、音楽的に何がそれ程凄かったのだろうか?2023/09/04