内容説明
大正十年春、中国・上海。新進作家芥川龍之介は、源義経“清朝の祖”説を証明するという秘本を求め、上陸した。ロシア・ロマノフ王家の秘宝・ペテルブルグの星の行方は? 清国再興をもくろむ日本陸軍の黒幕とは? 連続殺人と歴史の謎に挑戦する芥川探偵の名推理。歴史ミステリーの俊英井沢元彦の長編力作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
63
芥川龍之介を探偵役にした、現実と虚構のあいまを行くようなドラマ。「判官びいき」から生まれた、「義経ジンギスカン説」は有名だが、さらにまことしやかな説を巡る物語。果たして天下の真本か、それとも偽書か、という点に興味を惹かれた。解かれた真相を読んで、「なるほど!」と関心。そういう方面の知識はあったが、それが適用される対象だったとは。10年後の昭和6年、ついに戦争が始まるが、そのとき芥川はもういないことに気がついた。2019/09/03
とも
41
★★★☆当作は芥川隆之介を探偵役に、義経伝説を追う作品。とはいえ、よくある ”義経=ジンギスカン”説ではない。この表のテーマが真実よりかは、裏テーマについて、どちらかというと 作家がほんとうに伝えたかったのは こちらではないだろうか。よくよく考えれば、井沢作品には 表題のメインテーマとは別に、裏に潜む巨大な政治や経済、文化などについての真実の考察の方が、ほんとうに言いたいことなんではないかと。そう考えて読み直せば、新たな発見が生まれるのではないか、そんな思いを持ちながら、読み耽った作品であった。 2016/12/30
TheWho
14
「逆説の日本史」で異彩を誇る著者が、文豪芥川龍之介と、若き日の明智小五郎を名探偵に仕立て上げ、源義経北行伝説に隠された陰謀と、ロマノフ王家継承の秘宝を巡る陰謀に挑む歴史ミステリー。時代は大正期、盟友菊池寛に義経清朝始祖伝説を証明する秘本探索で上海に渡った芥川龍之介が、ロマノフ王家の秘宝を追う若き日の明智小五郎と出会い、異なる謎が絡み合い各国の陰謀に潜む壮大な歴史ミステリーへと展開していく。大正期の混沌としたユーラシア大陸の闇を体現できる歴史ミステリー好きには、お勧めの一冊です。2015/06/28
とし
6
「逆説の日本史」の筆者が昔どんな小説を書いてたのか気になって、その出世作を読んでみた。芥川龍之介を探偵役にした歴史推理モノ。なるほどな~、という感じ。話のスケールが大きくて面白かった。他の作品も読んでみたい。2014/10/26
紫
4
芥川龍之介を主人公に、若き日の明智小五郎や皇女アナスタシア等々、虚実取り混ぜの豪華キャストでサービス満点の歴史サスペンスであります。源義経大陸亡命説をあつかっておりますが、古文書の争奪戦とその真贋をめぐる殺人事件を軸に物語は進んでいきます。歴史の謎解きを期待すると肩透かしですが、デビュー作『猿丸幻視行』で折口信夫を主人公に起用した井沢先生にとっては、こちらの方が進んでいきたかった路線なのかもしれません。ただ満州よりもロシアの関係のシーンの方が印象深かったりするのはどうなのでしょう。星3つ。2012/06/19