内容説明
異国の少年たちの物語のはずが、これは、“ぼくたち”の姿だ――。デビュー作「甘露」が芥川賞候補になった新鋭、待望の初小説集!闘鶏場で胴元を務める父親が、悪魔から村を守る祠をつくる責任者となった日から、ベニグノの周囲は少しずつ変わり始めた。幼なじみのグレッツェンの大切な鶏が殺され、島で殺人事件が起こり、地震で祠が倒壊し――。東南アジアの島の少年を襲う熱くて不穏な暴力を描いた傑作。
目次
蹴爪
クイーンズ・ロード・フィールド
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
散文の詞
122
-蹴爪- 貧困の中、闘鶏の軍鶏に着ける蹴爪がそれへの抵抗として描かれてている。みたいだ。どうも、翻訳物のような感じで、なんか、集中できなかった。 淡々と語られる点は、いいと思うのだが、その反面、どうも感情がノッて来ない言うか、状況がわからない。 そういうこともあるんだろうなって感じだった。 -クイーンズ・ロード・フィールド- 翻訳もののような感じで、馴染めないままに終わってしまった感じ。どうも、幼い頃からの回想を書いているようなのだが、最後に少しだけ救いがあるだけで、だから?って感じだった。2020/12/11
あじ
37
羽根をむしり肉を抉る“蹴爪”の刃に断末の沈黙。闘鶏に魅せられしベニグノ少年が、血の匂いを嗅がしながら記憶を語りだす。靄の中を歩くベニグノの背中が時おり掻き消され、言葉足らずの語りがどこに向かっているのか見失ってしまいそうだった。ベニグノのポケットに潜ませた変哲のない赤いガラス玉は、元凶をもたらす魂を蓄積していった、ベニグノの化身だったのかもしれない。パナマの熱風がじっとりと嫌な不穏さを残していった。【表題作ほか一篇収録】◆デビュー作「甘露」が芥川賞候補になった新鋭の待望の初小説集。2018/06/26
おかむら
25
2011年にデビュー作が芥川賞候補になった著者の初小説集。2編収録。両方とも馴染みのあんまりない外国が舞台なのがちょい珍しい。かつテイストが全然違うのも珍しいかも。不思議な読後感。「蹴爪」はフィリピンの田舎の島の少年の話。貧乏と暴力の気配が濃厚。「クイーンズロードフィールド」はスコットランドの田舎町のサッカーファンの話。地味な4人組の青春。こっちの方が好き。イギリスで映画化して欲しい。2018/08/29
ショコラテ
17
生まれた国、家族、経済状態、襲いかかる不幸。自分で選べないものに翻弄されるしかない少年、あるいは少女。それは幼い頃の自分の姿なのかもしれない。南の島の闘鶏の蹴爪の画像を検索すると、それは小振りのナイフにしか見えなかった。どちらかが死ぬまで戦うそうだ。主人公の選択肢が摘み取られ、逃げ場がなくなっていく閉塞感に、明るい未来が待っていないことはわかっていたはずなのに…。主人公に暴力を振るう兄が不思議だったが、二羽の闘鶏だとすればあの未来しかないのだろう。やりきれない気持ちでラスト1行を読み終えた。ネットギャリー2018/06/20
ささやか@ケチャップマン
8
適切な文学小説。2018/09/02