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内容説明
こまげたの音高くカランコロンカランコロンと……江戸は根津の清水谷に住む、若い美男の浪人・萩原新三郎のところへ、旗本の娘のお露と女中のお米が毎夜通ってくる。新三郎が悪い女に騙されては困ると、家来同様の伴蔵が、ある晩、新三郎の家を覗いてみると、彼が楽しげに語らうのは2人の「幽霊」であった。お露と新三郎の悲恋の結末とは!? 落語の神様による怪談噺の最高傑作。他に「怪談乳房榎」を収録。解説・堤邦彦
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
aquamarine
70
カランコロンカランコロンとこまげたの音高く、つねに変わらず牡丹の花の燈篭を下げて…一目で惚れた男に焦がれ死にし、死んでも諦めきれず彼女は通う。題名とあまりに有名なこのシーンだけが印象に残る噺ですが、実はその二人だけではなく、たくさんの人々の思惑が絡み物語が巡っていくことに驚かされました。特に後半は怪談というより敵討の物語。因果関係や巡り合せに驚きます。人間の欲や業というもの、女の執念がどういうものなのかを突きつけられるようでした。当時何回にも分けてこの落語を聞いた人たちはどんな思いで先を待ったのでしょう。2019/11/02
shizuka
46
柳家さん喬師匠の「牡丹灯籠(通し)」を見る機会を得た。怪談噺だから避けていたところもあったが大間違いだった。とりわけ圓朝師匠の名作だからなのだろうが、なんとも壮大で幽玄で美しいお話。幾夜へても人間の本質はかわらない。それが哀しみでもあり、おかしさでもあるのか。圓朝師匠の作を晩年の桂歌丸師匠は語り直した。立派な功績を最期にお残しになったと思う。朽ちていきそうなものごとを、どこかで誰かが目をかけ慈しむ。こうやって世の中まわっているのかなと思う。昨年から落語に親しみずっとはまっている。人生がぐっと豊かになった。2019/07/13
不識庵
22
話は落語家のきびきびとした調子で進む。読む前に持っていたイメージとはかなり違う。この世ならぬ者の鳴らす高下駄の音も、不穏な空気を生じさせるが、正直なところそれだけである。2018/08/27
TSUBASA
19
萩原新三郎に恋い焦がれた末に死んだお露。その執念は亡霊となり、夜な夜な牡丹の燈篭を下げて新三郎のもとへ『怪談牡丹燈籠』。磯貝浪江は元武士で絵師の菱川重信の美しい妻を寝取り、あまつさえ下男の正介に手伝わせて重信を殺して息子の真与太郎も殺そうとする。果たしてこの極悪人の末路は『怪談乳房榎』。『真景累ヶ淵』もそうだったけど、怪談とは言うものの仇討ち話、人情噺がメインだったりする。怪談のエッセンスは入れつつ、聴衆が楽しんでいたのはやはりそういう王道物語だったのだろうな。2021/11/21
春風
18
圓朝子演ずる怪談牡丹燈籠および、怪談乳房榎の直写。「もってわが速記法の功用の著大なるを知りたまうべし」と速記者・若林玵蔵が自信満々にいうのであるから、本著は圓朝子の噺を真に写すものなのであろう。二編とも舞台は江戸期の江戸。不実なる色に端を発するは、妬みか嫉みか或いは執念か。妄執はいつしかかたちを成して顕れ、その想いを遂げんとす。然れども、げに恐ろしきは生者が心。己が平穏無事を希う許りに、非道を為すとは人の心根の浅ましきが故か。南無阿弥陀南無阿弥陀2019/08/21