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内容説明
日本植民地下、その差別的境遇にあった台湾先住民は、軍属・兵士として太平洋戦争に動員、南洋戦場に投入され、酸鼻を極めたゲリラ戦を戦った。知られざる高砂義勇隊の真実。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yamatoshiuruhashi
38
台湾の現地人を当初は軍属として雇用し、戦局悪化に伴い兵士として使う。「日本人」として戦った彼らに対して日本という国家は、戦後彼らが日本人でなくなったこと、国籍が違うことで何らの補償もましてや顕彰もしていない。これは恥ずべきことである。その認識のもとに本書を手に取ったが、ますますその思いは強まる。日本軍の下に南方戦線に従軍し漸くに生還したら、蒋介石国民党軍に強制的に徴募され大陸で戦い、中共軍の捕虜となったら赤軍に編入されて朝鮮戦争では北朝鮮のために戦わされ、生き残れば紅衛兵に糾弾された人々に頭を垂れるのみ。2019/05/01
スー
20
日本統治時代に最も低い地位におかれた原住民達は地位向上を目指し自ら言葉を封じ積極的に日本化し、戦争が始まると軍に志願、場所や戦争末期には強制的に出征させられ激戦地の南方に送られる。当初は荷物運びや屯田兵のような事をしていたが戦局の悪化により兵として扱われる。彼等は視力聴力嗅覚に優れ鳥の鳴き声の変化で敵に気付き、夜間もジャングルで迷わず音も立てずに敵に忍び寄る事が出来る為に常に先頭に置かれ激戦を繰り広げ多くの戦死者を出した。帰国後も妻が強制的に慰安婦にされてたり日本協力者とされ困難を生活を余儀なくされる2018/09/15
ようはん
17
台湾の山岳部に住んでいた原住民の高砂族は太平洋戦争当時、日本軍に徴用され日本兵として戦ったという事実が語られる。南国の山岳育ち故に南方戦線のジャングル生活に適応し皇軍としての忠誠心も高く勇猛であったが、数多くの戦死者を出し戦後は国民政府に利用され日本にも冷遇気味の扱いで不遇だった。しかしニューギニア戦線での過酷な死の行進や人肉食の描写はきつい。日本軍は高砂族からジャングルの適応術を学ぶべきであったかもしれないが2度と悲惨な侵略劇は起こして欲しくは無い2025/06/14
ののまる
10
太平洋激戦区で日本兵を助けた高砂義勇隊についてはよく知っていたが、銃後の台湾原住民の妻や娘たちが、台湾駐在日本軍兵士のための慰安婦に「総動員」として強制従事させられていたことを初めて知った。また日本軍兵士として戦い靖国に合祀されているのに(本国に返したいと要請しても却下)、きちんと戦後補償をしていないなど、日本の戦後処理は本当に他者に対して結果的に侮蔑的な態度だ。2021/01/08
CTC
9
7月の平凡社新書新刊。著者は愛知学院大教授。高砂族は台湾原住民16民族の総称(戦前は7種族とされていた)。本書は当時「最も進化(日本化)している」と云われたタイヤル族中心に構成されている(37年時点の台湾人口は545万人、うち高砂族全体は15.4万人、タイヤルは3.7万人で3番目の人口)。台湾からは志願・徴兵合わせて8万の兵と12万の軍属が出征しているが、実はこの、今も名高い高砂義勇隊はそのうち3,843人を占めるに過ぎない。最後の日本兵スニヨン=中村輝夫さん含め(氏はアミ族)、精強だったという事だろう。2018/10/25