内容説明
大ベストセラー『震える牛』ふたたび!
警視庁捜査一課継続捜査担当の田川信一は、メモ魔の窓際刑事。同期の木幡祐司に依頼され、身元不明相談室に所蔵されている死者のリストに目を通すうち、自殺として処理された案件を他殺と看破する。不明者リスト902の男の発見現場である都内竹の塚の団地を訪れた田川と木幡は、室内の浴槽と受け皿のわずかな隙間から『新城 も』『780816』と書かれたメモを発見する。田川が行った入念な聞き込みにより者不明者リスト902の男は沖縄県宮古島出身の派遣労働者・仲野定文と判明した。田川は、仲野の遺骨を届け、犯人逮捕の手掛かりを得るため、宮古島に飛ぶ。仲野は福岡の高専を優秀な成績で卒業しながら派遣労働者となり、日本中を転々としていた……。
現代の生き地獄を暴露する危険きわまりない長編ミステリー!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
🅼🆈½ ユニス™
104
期待通り面白い。2020年を明ける最初の一冊としても相応しい社会派サスペンス小説。派遣会社と企業との癒着やカラクリなど、派遣労働者の実態をしっかりと取材して丁寧に詳細に描写しているならば、凄惨すぎる。ま、警視庁の中でも1、2を争うほどしつこい切れ者刑事が再捜査に乗り出した事実は動かない。田川信一、木幡祐治の活躍を期待しながら…下巻に❗️2020/01/01
はるを@不定期低浮上中
102
🌟🌟🌟🌟🌟。¥110。積読本。身元不明の自殺者として処理されていた案件が実は他殺なのではないか、というところから物語が始まる。果たしてこの被害者は一体誰なのか。その謎を追い被害者の遺骨と共に警視庁の田川刑事が辿り着いた場所は沖縄だった………相葉作品は事件のスリリングさは勿論保証付きなのだが物語を追いかけていくとやがて壮大なテーマが浮かび上がる。今回は自動車業界と派遣労働者の雇用形態と現場の実態。自分の会社も該当するような箇所もあり読んでいて憂鬱になった。「聞こえるか⁈人間の壊れる音が!」下巻へ。2022/08/11
五右衛門
90
読了。前作から随分経っちゃいましたが久しぶりの作家さんでした。前作にも登場した主人公がまたまた社会の深いところ(前回もそうでしたが一般社会生活者の耳に入ってこないようなネタ)を抉り出す作品になっています。上巻では事件をどんどん炙り出していきます。読んでいながらもっと追い詰めろ!と主人公を応援していました。下巻も楽しみです。がしかし内容は本当に人を部品以下としか見做さず劣悪な環境へ追い込んでいく酷いものでした。個人が悪いのか?社会が悪いのか?下巻へ2019/04/09
アッシュ姉
86
自殺として処理された身元不明者の死因を他殺と見抜いた捜一継続捜査班の田川警部補。メモ魔の切れ者刑事による地道な再捜査で浮かび上がった偽装殺人の真相とは。やっぱり相場さんの社会派サスペンスは面白い。読み出したら止まらない。テーマは重いが、ページをめくる手は軽い。無慈悲にも殺害された心優しき青年の無念を晴らしてくれることを祈りつつ下巻へ。2019/04/02
saga
73
『震える牛』の次に選んだ著者の作品。鑑識課の身元不明者解消ノルマに付き合わされることになった田川刑事。しかし、自殺扱いだったホトケに他殺の痕跡を発見し、再捜査に着手したことから、派遣労働者の過酷な運命が露わにされていく。同時に、SITで業務上過失致死傷を扱う鳥居刑事と、派遣ビジネス、ハイブリッド車製造にまつわる黒い霧のストーリーが進む。本書を読むと、日本標準の製品開発は自動車に限らず、世界標準から見るとガラパゴス化が進んでいるのを実感できる。続きが気になる展開。下巻へ進むぞ!2021/10/26