内容説明
インド帝国の警察官としてビルマに勤務したあとオーウェル(1903―50)は1927年から3年にわたって自らに窮乏生活を課す.その体験をもとにパリ貧民街のさまざまな人間模様やロンドンの浮浪者の世界を描いたのがこのデビュー作である.人間らしさとは何かと生涯問いつづけた作家の出発にふさわしいルポルタージュ文学の傑作.
目次
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パリ・ロンドン放浪記
解 説
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
413
G・オーウェルのデビュー作。まだ20代半ばのオーウェルがパリとロンドンで(あえて)赤貧の生活に身を投じて書き上げた渾身のルポルタージュ。前半のパリ篇は日記風に、そこでの生活を綴る。ホテルXでカフェトリー(皿洗い)の職を得るまでは、常に空腹との戦いの毎日が続く。カフェトリーの一員としての目から見たホテルの厨房が詳細に語られていて実に興味深い。一方のロンドン篇は、考察の部分が多くなる。凄まじいのはスパイク(貧民救済院)の描写。これではたしかに、およそ人間の尊厳などはどこにもない。これが麗しのロンドンなのだ。 2018/09/14
ケイ
147
中流階級出身のオーウェルがパリとロンドンで貧乏な放浪暮しをする羽目に陥る。何日か飢えたとしてもパリには陽気が残る。レストランの厨房、皿洗いの単純さと過酷さ、そして仕事を一旦見つけるまでの貧しさやひもじさ、生きるに必要な酒とタバコ。オーウェルはそんな労働をゾラやシェイクスピアを引き合いにだして描写するが、彼らとちがうのはオーウェルが実際に体験したルポルタージュということだ。ロンドンの浮浪者生活にはパリの享楽さはなく、最後まで保つ対面というものがあるのだと感じた。パリの厨房は一読の価値あり。楽しい。2022/01/13
syaori
85
「一文なし」体験記。パリではスラムや皿洗いの生活を活写し、ロンドンでは浮浪者臨時収容所の実態やそこに集う浮浪者について報告する作者の筆は躍動的で、みじめな窮乏生活を描きながらも楽しい読み物になっています。そして、そこから得た結論―皿洗いから抜け出せないのは怠け者だからではなく思考を不可能にしてしまう長時間労働のためだ、浮浪者は社会の寄生虫などではなく仕事を失った「ふつうの人間」に過ぎないのだ―は、その鮮やかな描写から出てくるだけに、現在でも私達の目を啓いてくれるに足るものであり続けているように思いました。2023/01/27
こばまり
56
ちょっとやそっとの潜入ルポではない。首までどっぷり貧乏に浸かっている。描かれた何人かは、読者にとっても忘れ得ぬ人々になる。総じてパリ編の方が楽しい。ジャック・ロンドンの『どん底の人々』より筆致が明るいのは作家の性格によるものかもしれない。2022/02/17
slider129
49
作家として世に出る以前の若きオーウェルが、パリとロンドンで体験したその日暮らしの日々を綴った放浪記。文字通り生きるだけで精一杯と言える状況であるはずの極貧振りが、訳者さんが書いている様な臨場感溢れる描写により、小説みたいに楽しく読ませてもらった。オーウェルがこの生活に投じた頃は世界大恐慌の時みたいだが、21世紀の現代でも日本を含む先進国で取りざたされている格差の問題は、百年後の今でも何ら解決されていない事がわかる。資本主義により人は確かに便利な世の中を築いたが、同時に何か大事な物を忘れてはいないだろうか。2018/12/09
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