内容説明
江戸・八丁堀に住まう町方同心の影浦善朗とおし乃。堂々たる長身の夫に美形と評判の妻で、誰もが羨むお似合いのおしどり夫婦であった。だがその実態たるや、影浦は北町奉行直下の隠密、おし乃も京の都から遣わされた女盗賊という“影の顔”を持っていた。しかも、お互いの闇の姿をつゆ知らず、いつも盗賊として江戸を騒がしている妻を、隠密の同心として夫が追っかけているという凄腕同士の夫婦であったのだ!そんな影浦とおし乃だったが、幕府の野心、朝廷の大望という大掛かりな企みにも翻弄されていく。さらに、一見敵同士に見えたふたりにも心情の変化が芽生えはじめて……。ついにおしどり夫婦、危機到来か!?そして、身分を隠し合うお互いの命運は一体どう転んでしまうのか!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
海猫
58
町方同心の影浦善朗と妻・おし乃。誰もが羨むお似合いのおしどり夫婦である。しかし影浦の実態は北町奉行直下の隠密で、おし乃の本性は女盗賊でお互いに敵対する立場。しかも夫婦は互いの裏の顔をまったく知らないという、ユーモアミステリのような設定を、時代小説でやってるのが面白い。艶っぽい場面が多く、お色気の要素もかなり盛ってある。軽快なテンポで読みやすく、起こる事件も夫婦互いの正体が、バレかねない状況に陥るのでけっこうハラハラする。また一種のコメディーとして読めるので、可笑しみがあった。良かったので続刊も読んでいく。2020/03/27
サケ太
13
幕府、北町奉行に仕える影同心〈狐〉と朝廷の命により散り散りになった六十六面を狙う盗賊〈猫御前〉。二人は互いの正体を知らぬまま夫婦となっていた。ある時は敵、ある時は味方。二人は争い、助け合いながら接近してゆく。表の顔では胸焼けするほどいちゃいちゃをみせつけるのおしどり夫婦。裏の顔では、惹かれあってゆくのがもどかしい。しかも、裏では二人を支える者たちの思惑もあったり。軽快な文章で描かれる二人の関係性が面白い。2018/04/09