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内容説明
「人は幸福になるために生きている」という考えは迷妄であり、間違いだと逆説的に説く幸福論。自分を他人と比較し、他人の評価をたえず気にすることが不幸の元凶であり、名誉、地位、財産、他人の評価に惑わされず、自分自身が本来そなえているものを育むことが幸せへの第一の鍵である説く。『読書について』の哲人が授ける、この七面倒くさい人間社会を生き抜く知恵。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
100
「好きな事を仕事にすべき」教の家族から「はなも好きな仕事をやったら?夢はないの?」と聞かれる度に「自分は人間としての喜びがないと思われているんだ。家族から落伍者だと思われているなら、他の人は・・・?」と思い込み、しんどい事がある。そんな気持ちを軽くしてくれる本です。他者や世間が作った価値観と比べ、そこに依存するからこそ、人は不幸に自らを縛り付けてしまう。「幸せになれなければならない」というのは自己実現ができるようになってからの新しい業のようなものなのかもしれません。自分の素質を如何に伸ばし、与えるかも大切2018/04/10
かわうそ
39
外部的な事実は自らの精神を通じなければならないのです。ということは外部的な事実は間接的な影響しか与えれられないてす。あくまでも精神という色眼鏡を通してでしか伝わらない。そのためにその色眼鏡である精神が腐っているとどんな幸福な事実も幸福の要素となり得ないと思います。地位や名誉、財産を追い求める心と現実的な事実との揺らぎが心の不快感を募らせますが、どんなに困苦を切り抜け、財産を追い求めようとも卓越した精神がなければその果ては退屈であり、不幸になります。2022/09/29
molysk
35
人生の財宝は、「その人は何者であるか」「その人は何を持っているか」「その人はいかなるイメージ、表象・印象を与えるか」の三つに規定できる。このうち、何が重要なのか。現実世界のすべてのものは、主観と客観の二つの側面から成りたっている。外界である客観は運命の手に握られて変化しうる。一方、私たち自身である主観は変化しない。よって、主観である第一の財宝が、客観である第二、第三の財宝よりも圧倒的に重要であることは明らかだ。人生の幸福にとって、その人の身におのずからそなわるものこそ、最も重要なものである。2019/09/14
かわうそ
32
財産は海水のようなもので飲めば飲むほど喉が渇く。つまり、財産に対する欲求というのは解消不可能なものだ。財産を求めるものは「重心は自身の外部にある」のであって究極的に幸せになるにはどうすればいいかと言うと「重心を自身の内部に置く」ということである。しかし、これが難しいのは言わずもがなである。現実的に考えれば「重心の一部分を自身の内部に置くようにする」ことこそ幸福であることに寄与すると思う。直接的に自らに作用するのは精神的な内部的な部分のみであるから重視すべきは自身の認識である。2022/03/19
かわうそ
30
『「人を重んじない者は、重んじられる」』逆に言えば、人を重ん時すぎることは必ずしもいいこととは限らず、むしろマイナスになる場合があるということである。「犬でさえ親切にしすぎると、なかなかおとなしくしていないものだ。まして人間は言うまでもない。」ここで言えることは人に期待することは必ず落胆を生むということだ。人を過度に重んじることは自らを軽視していることになるのであってまさに自分の空疎さに耐えられない故に他人を過度に重んじる結果になってしまうのである。常に群れたがる人たちも同様だ。2022/02/21