内容説明
雨かんむりの漢字には、物語がたくさん詰まっている。
「霽」(さい、はれる=晴れる)は雨かんむりの漢字だが、晴れるという意味を持つ。雨なのになぜ晴れの意味を持つのか。漢字の起源は呪術から始まっていると言われる。呪術師の重要な役目は「雨乞い」なので、いつ雨が降り出すのか、いつ止んでしまうのかに関心があった。「晴れ」という概念は無きにひとしく、「雨が止んだ時」という意味で「霽」が使われたのだ。雨の漢字をひもとくことで漢字の起源や中国の歴史や文学にも触れることができる、無類に面白い漢字エッセイ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
鉄之助
271
あとがき、に書かれた「人生には、時折、印象的な雨が降る」に、まいってしまった。自分にも経験があった。路面電車のレールが小ぬか雨に濡れ、大きなカーブに沿って蛇のようにどこまでも続いていた、あの時。人生の大きなものを失った瞬間が今も思い浮かぶ。本文では、「雪」の項が味わい深かった。雪は「すすぐ」の意味があり、元来は雨かんむりに彗星の彗が下に書かれた、という。ほうき星=箒で掃くように取り除いて綺麗にすること。「すべては白銀一色の雪に流しましょう」。あなたにとっても、気になる雨かんむりが見つかるかもしれません。2021/03/21
フリージア
41
漢字が入ってくる前、日本に文字はなかったのだろうか。改めて漢字が物事を繊細にい表して感慨だった。雨冠の見たこともない漢字が沢山出てきたが、丁寧に成り立ちを説明してくれていた。雨は天から降る物すべてで、雪雨る(ゆきふる)と動詞で使ったとか、例えば雨+令(澄みきる、冴え渡る)=零・・・澄みきった雨粒が落ちる。この字を使った涙が零れる(こぼれる)は、涙の後は澄んだ心持ちになる事を表しているとか、霊や需は雨に関係ある?など興味深く読みました。2021/03/26
ま
38
雨かんむりという一見厳しそうなくくりだけど著者の教養としなやかな筆力で見事にまとめあげている。知ってた故事でも雨にまつわるものとして捉え直すとまた見え方が違ったり。こういう造詣の深い人の話は聞いてて楽しいんだよな。2023/05/27
Roko
15
雨かんむりに斉の旧字を組み合わせた「霽」は「はれる」と読みます。現在一般的に使われる「晴」は「日が出て青空」ということですが、「霽」は「雨が済む」つまり雨がやんで晴れるという状態を表す文字なのです。ただ晴れているということではなく「先ほどまで雨が降っていたが晴れてきた」という天気の変化を示す、詩的というか、ストーリーを感じさせる文字なのです。わたしたちに水をもたらしてくれる雨、降らないと困るけど、降り過ぎても困る雨。わたしたちの生活に密着したものだからこそ、雨かんむりの字がたくさん生まれたのでしょうね。2020/06/21
bapaksejahtera
14
著者名が余りにも穿った物であるので、当初は俗な本かと身を引いてしまったが稀姓乍ら本名という。漢和を中心に辞書作りに携わったというが、この名前と仕事に関して身辺のエッセイを読んでみたくもある。漢字の成り立ちについて官学に抗して独自の学問を成立させた白川静を私は評価するのだが、著者ぐらいの世代になると然るべき敬意が感じられる。雨カンムリの字という狭い分野を掘り下げた軟らかいエッセイで肩を凝らさず読む事ができる。但し白川辞書や各種漢字辞典に照らして読むので時間は掛った。雷と電の本義や霙と霰の相違等興味を持った。2026/06/15
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