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内容説明
皇太子の結婚はいつの時代も話題になるが、嘉仁親王(大正天皇)の婚約内定取り消しはあまり知られていない。内定変更がなかった裕仁親王(昭和天皇)と久邇宮良子女王(香淳皇后)の場合と違い、嘉仁親王の妃は伏見宮禎子女王から九条節子(貞明皇后)に代わった。なぜ婚約は解消されたのか。病弱な嘉仁親王一人しか直系男子に恵まれなかった明治天皇の苦渋の決断、それを取り巻く皇族たちの思惑など、皇太子妃選定を通し、近代史における天皇・皇族の実相に迫る。帯の推薦文は宮部みゆきさん。「本書を手にする方は誰でも、教科書に載っていない史実と秘話に驚き、その謎を追う歴史探偵になります」。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
M.O.
16
面白かった!昭和だけでなく明治時代においても皇太子妃が決まるまでにはすったもんだが隠されており人間関係のしがらみが複雑に入り組んでいる。最初に内定していた禎子女王は肺病の疑い(本当?)がある為見送った方が良いと医師から進言を受け明治天皇は悩みに悩んで受け入れる。代わって候補に上がったのは「健康だけが取り柄」(見た目は?等と周囲ははばかりもなく言う)の九条節子。結果的に昭和天皇はじめ四皇子を産んだのだから良かったのかもしれないが、女性をなんだと思ってるのだ?と今の時代なら間違いなく言われる。2023/12/07
金吾
16
○様々なしがらみ・思惑があり、事実ならばまさに伏魔殿であり、思っていたことより根深い話であることがわかりました。皇太子妃候補が下世話な表現で言うチビ、ブス、イジワルて評価されているのは笑いましたし、最終的には消去法で取り柄が健康と評価された皇太子妃も可哀想だと思いました。2020/11/12
keint
7
大正天皇(嘉仁親王)の婚約相手が当初は禎子(さちこ)女王に内定していたが、急に取り消しとなり九条節子(貞明皇后)と変わった過程を検証している。 明治天皇や伊藤博文、九条家、伏見宮家を始めとした皇族、侍医の思惑が複雑に絡み合っており、宮中特有の事情も相まって重要な問題だったのだなと感じた。最終的には内定取り消しになった禎子女王も、山内家に嫁ぎ幸せな人生を送られたと知り安心した。2020/02/27
ふたば@気合いは、心を込めて準備中
7
やんごとなきあたりの人間関係や感情の複雑さは、そうそう簡単には解きほぐすことができないようだ。大人たちの思惑に振り回される若い姫たちの心の内はどうだったのだろう。ほぼ決定事項の婚約を一方的に(少々理不尽ともいえる理由で)取り消されたほうも、婚約は整ったものの、不満たらたらに、八つ当たりのように容姿まで腐されたほうも、本人たちには全く関係ないところでの出来事で、どうしようもない。娘の婚約を取り消された親王の、心中如何許りだったか。何も言わず、身を引き、恨み言一つもらさなかったところに皇族の矜持を感じた。2018/06/20
kawasaki
1
皇太子嘉仁親王と伏見宮禎子女王との婚約解消。本書でも核心部分が推断になっているように、「某重大事件」に比して史料の少なさが研究を阻むネック。口さがない批評、宮同士の嫉妬、幕末以来の怨念等が交錯する宮廷の華麗な残酷さ。「産む機械」だの「生産性」だのというグロテスクな言葉を想起するのだが、それでも本書にあるように、伊藤の醒めた計算や明治天皇の情の発露と自制は、天皇・皇族を無闇に神聖化して議論を封じた「のちの時代より健全」に思える。そして現在も憲法上は「国民の総意」として引き継がれる課題であるのだが…。2019/05/09