内容説明
最高ってなんて最高なんだろう。僕らはいつも最高だ。明日またくる朝。浅漬──。現実から目を逸らし、表層的なハッピー感に拘泥する表題作「ゴランノスポン」。自らの常識を振り翳す人間の暴力性を浮かび上がらせ、現実に存在する歪みを描く「一般の魔力」。現代と中世が書物を介し烈しく混ざり合う「楠木正成」他、秘蔵小説7編を収録。笑いと人間の闇が比例して深まる、傑作短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
175
初めまして町田さん。なんていうかなんと言うか、なんだかとっても衝撃です!「いつの間にか楠木正成が俺の頭のなかに偏在」でもう爆笑。私の頭の中も楠木正成に変色。源氏物語の末摘花も、この人が描くと絶妙にぶっ飛んでる。源氏の言うことを何とも軽い感じで、「はーい」と受け流す命婦とふと庭を見るとぬう、と立っているストーカーの頭の中将がツボ♡ かと思えば「一般の魔力」では自分に内在した開き直った「一般の声」みたいなものを眼前に突きつけられるようで何とも胸が悪くなったり。この独特の言い回しとか訳わかんない感じ、好きです。2019/03/17
yoshida
90
「ギケイキ」や「告白」で再燃した私の町田康作品への渇望。この短編集の狙いは「楠木正成」と「末摘花」。まず「末摘花」。源氏物語でも異色の帖。町田節による頭中将や命婦とのやり取り。末摘花に連絡しなきゃいけないけど、参ったなーと言う光源氏の様子がリアルに感じ笑った。「楠木正成」のラストも予想外でシュール。首が熱い。ぎゃあ。最後の「先生との旅」が予想外に秀逸。講演に向けて破れかぶれの様子がリアル。その道の権威の方との対面や車中での空回りが、分かりやすい。オチも予想していなかったな。これは実体験なのだろうか。堪能。2021/12/26
nico🐬波待ち中
86
相変わらずの町田節に翻弄させられた短編集。一番印象的なのは『末摘花』。色々な作家さんが描く光源氏を読んだけれど町田訳・光源氏も躍動感があっていい。これぞ男の本音、という心理描写が面白い。普段モテモテの光源氏が末摘花に焦らされて…ま、自業自得ですね。町田訳・六条御息所もぜひ読んでみたいので町田さんいつか描いてくれないかな。ラストの『先生との旅』。何度も出てきた「日本中世におけるポン引きと寺社権門」。内容がとても気になってしょうがない。中村文則さんによる『解説』。この表題の意味にはすごく納得…なるほど深い。2022/06/03
ペグ
79
中世とは、魑魅魍魎が跋扈する不条理な世界。この世界感が町田康さんの作品にはピタリと肌が合う。足利尊氏、新田義貞、楠木正成、大塔宮護良親王を色々な面で四段階評価する。って抜群に面白いなぁ〜(^_^)書名にもなっている(ゴランノスポン)は、全て自分を正当化する傲慢な主人公、妻も夫にただただ追従する主体性の無さ。呆れる。結末は余韻を残しながらも因果応報に恐ろしさを感じた。傲慢な人間や権力に隠れるずる賢い人間をふざけてみえる会話をオブラートに包んで七編の短編集。2018/11/20
H!deking
72
マーチダ先生によるマーチダ節全開の短編集。意味を理解しようとしても無駄ですよ。僕ら凡人には理解できません。いやそもそも大事なのはそこじゃありません。僕も帰って焼いたスルメで吟醸酒飲みたいと思います。ヌンチャクはヌルヌル。67冊目2018/07/27