内容説明
「国境」という概念が定着する以前から、東アジア世界にもたしかに領土・領有意識はあった。しかしそれはあくまで権力者の都合によるもので、一般の民衆には大きな意味をなさなかった。日本と新羅の国交が断絶した9世紀、朝鮮半島南西部を拠点にした海上貿易のドン・張宝高は、日本に唐物の商品を運び、貴族からも大いに喜ばれた。また中国の仏教聖地を訪れるために遣唐使船に同乗した天台僧の円仁は、新羅人の船に乗って帰ってくる。日朝間の海域では「倭人」が活発な交易を行っていた。境界を軽々とまたぎ、生活していた東アジアの人びとに焦点をあて、境界観の歴史をたどる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たま
17
『世界史のなかの戦国日本』が面白かったので、同じ著者の『中世日本の内と外』を読んだ。『世界史』の方は16世紀、こちらは平安、平氏、鎌倉、元寇、足利義満など15世紀以前の交流を扱う。日本と海外の交流と言いたいところだが、「日本史」専攻の学生さんたちを相手に、「日本」の実態の曖昧さを浮かび上がらせることにこの本の狙いの一つがあり、「日本史」の枠を揺さぶる爽快感がある。また史料に基づいた議論と共に、朝廷と武士の二重体制の成立、アジアの他地域から見た元寇、9世紀に遡る「神国日本」など、視野の広さが魅力的。2021/01/16
nagoyan
14
優。列島社会に成立した中央政府の対外交流史と、列島国家と半島国家、大陸国家のあいまいな「辺境」に成立した「倭」という社会にも、目を向ける。高麗と日本そして越南が、いかにユーラシア大陸に成立した蒙古帝国と対峙したか、その共通点と相違点。夜郎自大な対外認識が、今なお、われわれの自意識を拘束している恐れ。と、本書の内容は決して古びていない。2021/02/11
かんがく
11
著者の本は久々に読んだが、歴史観が開かれる。中世における「倭人」の意味する広さ、日中朝の間に広がる自由な海域世界が当時の記録や地図から活き活きと伝わってきて面白い。懐良親王と今川了俊のいた九州についてはもう少し詳しく調べていきたいと思った。2021/08/05
qwer0987
7
現代の視点で考える日本には明確な国境線があるが、中世ではその境界は茫漠で明確な線引きはできなかったという視点は興味深い。目を引く内容はいくつもあるが、遣唐使が廃止の頃合いから日本は内向きになり、穢れ意識も発展し、新羅憎しの朝鮮蔑視も生まれた話や、高麗の武人政権と日本の武家政権との比較、元寇を高麗目線やモンゴル目線で見る点や、ベトナムと違い対モンゴルで日本が高麗と連携しなかった話、朝鮮が日本を倭人と区別していた点、交易を続けるために日本国王を詐称した対馬のことなど面白い。この時代のダイナミズムを感じ取れた。2022/08/11
kuroma831
3
日本における中心と周縁の概念について。東アジアの周縁にあった日本が、京都を中心としたプチ華夷秩序に変わっていく経緯と思えばなかなか面白かった2020/01/08
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