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内容説明
第一次世界大戦前、イギリスを中心にヨーロッパは空前の繁栄を誇っていた。蒸気船が大洋を駆け巡り人や物資を運び、電信が普及、グローバリゼーションが急速に進展し、富がヨーロッパに集中したのである。また、この時期に人々の生活水準が上昇、市民社会が形成され、余暇も誕生した。しかし、そのような繁栄の裏には、搾取され続けた植民地と、奴隷にされた人々の犠牲があった。本書は、そのようなヨーロッパの光と闇の両面を描き出す。
目次
序章 ベルエポックの光と闇
第一章 一体化する世界
第二章 工業化と世界経済
第三章 労働する人々
第四章 余暇の誕生
第五章 世界支配のあり方
終章 長き歴史のなかで
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
37
近世史の専門家が19世紀ヨーロッパ、とりわけその繁栄の中核であったイギリスの歴史を論じる。19世紀イギリスは海運・通信(電信)・金融・保険を握っていたことによりヘゲモニーを握ったとし、工業については後半ドイツやアメリカにキャッチアップされていったため、必ずしも繁栄の理由ではないとする。また、砂糖などの消費が現金に必要性をもたらし、賃労働が拡大したというあたりは、川北稔に通じる。ただ、これらのことを実証しているわけではなく、推論なので、もう少し実証的な研究を見る必要がありそう。粗さはあるが刺激的だった。2019/09/18
coolflat
18
18世紀後半、イギリスは世界に先駆けて産業革命を果たした。私たちはどこか頭の中で、イギリスは世界でいち早く産業革命を成し遂げたのだから、その時(18世紀後半)にヘゲモニー(覇権)国家になったのだとイメージしている。産業革命=ヘゲモニー国家という図式である。本書はその固定観念を覆す一冊である。イギリスがヘゲモニー国家となったのは、ドイツやアメリカをはじめとした欧米諸国が工業化し、イギリスの工業力が相対的に低下した時代、すなわち19世紀後半である。なぜ相対的に工業力の衰えた国がヘゲモニー国家となれたのか?2019/10/13
fseigojp
14
アメリカ、繁栄の20世紀史を期待2018/08/08
かんがく
10
フランス革命とナポレオン戦争を経て、産業革命の下に植民地獲得競争に諸国が繰り出し、自由主義とナショナリズムの高まりの中で国民国家が形成された19世紀ヨーロッパ史。経済を中心に描いているが、難しい学説などを用いてなく、前後関係が理解しやすい。第二次産業革命によるドイツとアメリカの工業化後も、イギリスが海運・電信・保険を抑えることで覇権を握り続けた「手数料資本主義」という話が一番関心した。同作者が近世ヨーロッパを描いた『ヨーロッパ覇権史』も読みたい。2018/07/28
Tomozuki Kibe
5
著者は日本で唯一スウェーデン東インド会社の研究者。てかあったのか。 ヨーロッパの繁栄と裏返しに支配されていくアジアアフリカ。 イギリスの覇権の力はその工業ではなく、海運と保険という流通の支配にあるとみる第一章。 いわゆる「勤勉革命」についても前近代における民衆の全労働量が分かりにくいのに「工場で働く時間が増えた=労働時間が増えた」とは言い切れないとする第二章。 余暇の成立と「見栄としての余暇」をみな求めていくとみる(そして、それを可能とする海運の発展)第三章。 特に1章2章が面白い。2025/08/21
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