内容説明
プロ棋士とコンピュータの対局が世間の注目を集める中、日本将棋連盟会長の米長邦雄は、当時最強と言われたボンクラーズの対戦相手に自らを指名した。元名人とはいえ引退から8年経った棋士に勝機はあるのか。研究を重ねた米長は、ついに「敵」の弱点を突く秘策を見つける――。棋士対AIの先駆けともいえる大一番の全記録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アコ
23
2012年第1回電王戦の全記録。当時68歳で将棋連盟会長だった著者が熱心に研究する姿、棋界の未来やファンへの思いにグッとくるし、軽妙な文章にも賢さを感じて読み応えあり。〈コンピュータと人間の共存・共栄〉は多岐に渡り、コンピュータ将棋も進化。将棋中継にAI評価値が出たり、数億手先を読むなんて言葉も見聞きする。明朗でユーモアがある米長先生は現在の棋界をどう見るんだろうか。公私ともにめちゃくちゃなところもあったそうだけど、まだまだ活躍する姿を見たかった。※自戦解説以外は将棋知識はほぼ不要2020/10/06
ランフランコ
8
これは面白いよ。将棋に詳しくなくても楽しめる。将棋というものが対局に際してこんなにも研究を施して臨むものだと知った。それはもう凄い努力である。68歳の人がそのような作業を病気を抱えながら行うのは、文字通り命を削るような作業だったのではないか? そこで編み出された初手6ニ玉の秘密には震えるものがある。万全の序盤戦を進めたが、1つのミスを逃さず、まさに蟻の一穴を突くようなボンクラーズの逆襲に屈したことは残念無念である。今では電王戦はない。米長邦雄もいない。本書は色んな意味で米長邦雄の遺書になってしまった。2019/02/05
にゃこん
2
2020年の今、終盤で評価値がバンバン振れるような対局を見ると、人間側が強い時期が再び訪れているのかなぁと思う。それを、私のようなルールも覚つかないファンがネットで観戦できる幸せ。米長先生がこうでなかったパラレルワールドは、こんな風ではないのだろうな。2020/07/24
k
2
6二玉の戦略、素晴らしい。 将棋は全く分からないが電王戦関連の本は面白い。2019/06/27
大典太
2
米長邦雄永世棋聖VSボンクラーズから6年。当時読むよりも今読んだほうが、その価値がわかる一冊だと思う。Bonanza系ソフトの特徴、その強さ。対人間と対コンピュータの考え方の違い等今読むと納得できる部分が多い。当時、評判悪かった気がする△6二玉もコンピュータの定跡データベースを無効化する意味ではある手なのではと思わされた。後年の佐藤天彦名人VSPonanzaの初手▲3八金は逆に人間の常識を無効化する一手だったなぁと思う次第。将棋に興味のない方でも、人間とコンピュータの関わり考える上で参考になる一冊かも。2018/01/03