内容説明
足利氏一門の今川氏は、室町期には守護、戦国期に戦国大名と転化し、東海の大大名として君臨した。しかし永禄3年(1560)、海道一の弓取りと謳われた義元が、桶狭間で織田信長に急襲され横死。息子の氏真が跡を継ぐも、桶狭間後わずか八年余りで戦国大名としての地位を喪失する。
最盛期は駿河・遠江・三河にまで勢力を広げ、名実共に戦国の雄であったはずの今川氏が、なぜこれほどまで脆くも滅び去ったのか――。
三州錯乱をはじめとした国衆の離叛、その要因となった「家中」の強制的刷新による混乱と弱体化の動向等を丹念に検証。桶狭間敗北だけでは分からない「滅亡」の過程を明らかにするとともに、最新研究から、義元や氏真らの個人的要因に仮託されがちであった「亡国」のイメージを覆す。
NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」の時代考証者による、書き下ろし新作。
第一章 戦国大名今川氏の登場
第一節 氏親以前の今川氏
第二節 「戦国大名」氏親の登場から死没
第三節 氏親に関する考察
第二章 寿桂尼と氏親
第一節 家督継承者と「家督代行者」
第二節 寿桂尼の位置づけ
第三章 義元の時代
第一節 義元の栄華
第二節 領国西方の維持
第四章 氏真の生涯
第一節 “通説”今川氏真
第二節 離叛する国衆たち
第三節 離反する国衆と残る国衆――遠江西郷氏の検討
第五章 今川領国の崩壊
第一節 氏真の実像を探る
第二節 氏真の発給文書
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
六点
23
後書きで「明治まで今川氏続いてるし。氏真慶長まで生きてたし』と、著者がタイトルに文句付けてる珍しい本である。歴史学の妙味とも言える文書の年代比定の面白さを味わえた。『戦国遺文今川氏編』の比定すら見直されているのだ。しかし。武田信玄のエグさはものすごい。これだけやらかしたあとを投げられた武田勝頼の辛さは大変なものだったと思う。『武田氏滅亡』を再読したくなった。2019/01/17
サケ太
21
今川氏がどのように生まれ、戦国時代で大名家としては滅亡してしまったのか。様々な資料を追い丁寧に書かれている。史学というものかどういうものかがわかる。“家中”の若返りを強いられた氏真の努力も垣間見えた。“通説”では語られないその姿は非常に興味深い。しかし、周囲の環境が、状況が悪かったとしか言いようがない。花押についても少しは理解できたと思う。2018/10/19
春風
18
戦国大名今川氏の滅亡の原因を、文書・記録類を頼りに解き明かした一冊。著者は今川「家中」の入れ替わりが直接の原因と目している。本書の内容は、今川仮名目録を制定した氏親以降、氏輝・義元・氏真の4代の通史を眺めた後、各世代における新知見を提案したものである。主に著者は、今川氏の個人レベルでの花押の変遷に着目し、その変遷から文書の年代比定を行うという実証的な手法で、三河・遠江の国衆と今川氏の関係を読み解いている。本書の主役は氏真ともいえ、今川氏関連文書の研究蓄積から、若き氏真の領国経営に必死な姿が浮かび上がる。2020/09/28
スプリント
17
今川氏真を扱った時代小説を読んだばかりだったので 戦国大名の今川家への興味が募り本書を手に取りました。 名家今川家の勃興と没落がよく理解できます。2019/09/24
bapaksejahtera
16
守護大名今川家最後の当主氏真が、本書後半の中心である。但し義元についても彼の嫡蔗すら確実ではないし、桶狭間合戦の実態も不明な事が多い。更に氏真も今日、江戸時代成立の信長公記による信長英雄視や駿河攻めで氏真退場を齎した信玄を称揚する甲陽軍鑑の偏りを受けた俗説の影響下にある。本書では当時における大名と国衆及びそれらの宿老の動向等に目を配り、最新歴史学の知見を紹介する。兎も角舞に興ずるのは文化的大名なら共通の嗜み。信長の前で蹴鞠に興じたのが「うつけの沙汰」なら、同じ座に入り、自らも蹴った信長は如何と本書は説く。2023/09/07
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