内容説明
天文ファンなら、「白河天体観測所」は著者の藤井旭氏と同じようになじみ深い名称だ。
この観測所は藤井氏の飼っていた犬、チロが台長を務め、つい最近まで最新の天文情報を日本中のマスコミに配信していた日本を代表する「天文台」だった。
この白河観測所が昨年2014年にいろいろな事情が重なって閉鎖されたのだ。
本書では、この白河観測所とはどんな観測所だったのか、過去を振り返りながらその全貌を紹介する。
目次
まずは、私ごとから少々…
白河天体観測所をつくる
犬の天文台長さん
観測所日誌から（冬）
観測所日誌から（春）
観測所日誌から（夏）
観測所日誌から（秋）
隕石さがし異聞
白河天体歓食所のお楽しみ「アストロ鍋」
真夜中の訪問者たち（三田誠広／星新一／津島佑子）
チロの星まつり“星空への招待”
チロ望遠鏡づくり
一九八六年のハレー彗星
日本ハレー協会同窓会
南十字輝くチロ天文台
チロ天文台長の宇宙遊泳
あゝ、東日本大震災
ああ、楽しかったの五十年
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みつりんご
26
私設の天体観測所の設立、維持、仲間たちとの事、そして愛犬チロのこと。白河天体観測所の主メンバーであった藤井旭氏のエッセイ。大変であった事も楽しく、愉快な事はより楽しく書かれていました。チロの最期は悲しみが伝わってきます。私設観測所でありながらメンバーの皆さんが大勢の方に星空を見上げて欲しいと色々イベントをやったり基金を設立したりと輝く星を見つけた時のように心洗われる。天文に長けている人ならとても充実した一冊とおもいます。2015/12/07
キキハル
22
星が大好きな仲間たちとつくった私設の天文台。その長に飼い犬であるアイヌ犬チロを据えての50年間。夜ごと星を観測し、アストロ鍋を囲んで歓談する。わいわい楽しんでいるうちに、仲間内だけだった輪は、いつしかたくさんの人を巻き込み大きなものへと育っていく。星座のように星が結んだ出会いや別れをユーモアたっぷりに語っていてとても読みやすかった。すっかりチロとも仲良くなった気分だったので、別れの場面では涙も・・・。いい大人の課外活動拡大版といった感じで、星にはさほど興味のない私でも充分に楽しめた。2015/12/04
ローリー
10
藤井旭さんの『星になったチロ』と言う本があります。この本との出会いが私を星好きにさせたのですが、その後も天文に関する本を何冊か読ませていただきました。一度隣町まで講演にいらっしゃった時には、親に無理を言って連れて行ってもらったりもしました。その藤井さんの、チロとの12年間を含めた50年間の「白河天体観測所」で起きたたくさんの事柄を、一冊にまとめられたのが本作です。『星に～』でも読んだ内容や、他の著作などで知った事などと、初めて読む事がつながって、懐かしかったり驚いたり、とても楽しい読書時間でした。2015/10/13
ひこまる
9
『星になったチロ』の後日談が昨年秋に出ていたのを今まで知らなかった。 更に白河天体観測所が一昨年に閉鎖してしまったことも知らなかったorz チロの愛くるしさや星仲間たちとの楽しい日常を描いた巧みな筆致は健在。 自分も星仲間の一員になって30年ぶりに再会した気分にさせてもらったが 東日本大震災の項で一気に過酷な現実に・・・ 子どものころに戻って、また星空を眺めてみるか。2016/01/23
さばずし2487398
8
星の好きな人々がその為だけに作った観測所。その所長さんは犬のチロ。天文学的な話よりも共に過ごした仲間や訪れた人々、起こった出来事などが中心に書かれていて、雰囲気的には映画の『南極料理人』を思い出す。クスッとする話や、チロ亡き後そのイラストが土井さんと一緒に宇宙に行った泣ける話、ハレー彗星のイベントなどが生き生きと記録されている。深刻な事態でもポジティブで明るい筆者の文章が独特で印象的。人々の情熱がかけがえのない出会いと思い出を生む。筆者の言う『一瞬』にそんな宝物を得られたらこの上なく幸せだろうな。2019/06/01
